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【就活のリアル転載】素の自分の伝え方 「欠点」から広がる話題 海老原嗣生(2021/6/8付 日本経済新聞 夕刊)(2021/06/15)


 採用面接では、企業は「良い悪い」ではなく「合っているか否か」で学生を評価している。合ってもいない企業に、成りすまして受かろうとしても大抵見破られるし、仮にうまくいけば入社後に苦しむことになる。

 だから素の自分を見せて、合否を企業に委ねるのがいい。そうすれば自然と、合っていない企業は落ち、合っている企業に吸い込まれるように入っていく。それは、素のあなたを愛してくれる企業だから、楽しんで仕事をし、成長できるだろう。

 ただ、ここで大きな問題が頭をもたげだす。「素の自分」とはどのような話をすれば相手にわかってもらえるのか。そこに悩む学生は多い。

 ファストフードで仲間と語らい合うようなお茶のみ話をしたところで、あなたの人間性などはそんなにわかるわけではない。ダラダラと無意味な話をするのではなく、「あなたらしいエピソード」を具体的に伝えること。そういう「あなたらしい」ネタを事前にしっかり考えておこう。

 なかなか思いつかない時のヒントとして、私はこんなアドバイスをする。

 「あなたの短所・欠点は何ですか」

 人間、良いところを語ろうとすると悩むのに、なぜか悪いところはけっこうスラスラ出るものだ。とりわけ日本人はその傾向が強い。まず悪いところ、悩んでいる点、直したい行動、そんなものをあげつらう。もちろんそれだけでは企業に評価はされないだろう。

 そこからさらに2つのことを考えてもらう。

 1つは「その欠点、裏返すと長所になっていませんか」。

 たとえば私の教え子の一人に、気弱で心配性な女子がいた。彼女は緊張して面接でうまく話せない、と悩みを私に語っていた。そこで私は「あなたは心配性な分、用意周到じゃないか」と指摘した。さらに具体的に「たとえばゼミの花見の時、3日前から偵察をして、赴く時間と狙い目の樹、そして、必要なブルーシート数まで想定していたじゃないか。その時の話をそのままストーリーにして語ってみたら」とアドバイスした。

 ほどなく、その学生は、そこそこ人気のある自然食の通販業者に内定をとった。「通販業には丁寧な事務作業が求められる。地味で控えめでも全くかまわない」と言われたという。そう、やはり企業は合っている人を求めているのだ。

 そしてもう1つ。「その短所にどう対処してきたか」。弱点を克服するプロセスは、人間性が非常によく表れる。さらに、欠点を客観的に認知する力、それを取り除けた努力などは、アピールに値するだろう。

(雇用ジャーナリスト)


     

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