知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】採用巡るセクハラ 問われるは会社の姿勢 上田晶美(2021/6/15付 日本経済新聞 夕刊)(2021/06/22)


 またか!という事件が発覚した。関西の鉄道会社の人事担当社員による女子学生への「就活セクハラ」である。インターンシップで知り合った女子学生に個別に連絡をとり、わいせつ行為に及んだ。

 「就活セクハラ」については、何年も前から問題化しており、研修や著述を通じて防止対策を進めてきた私としては、無力感にさいなまれるばかりだ。なぜ根絶できないのか。

 厚生労働省が昨年10月、この件に関して1千人を対象に調査を実施した。被害の経験があると答えたのはなんと25.5%。4人に1人は経験している。

 被害の内容は「性的な冗談やからかい」(40.4%)など比較的軽微なものから、「食事やデートへのしつこい誘い」(27.5%)や「性的な関係の強要」(9.4%)まで。深刻である。

 被害を受けた場面は「インターンシップに参加した時」(34.1%)が最多。「企業説明会やセミナーに参加した時」(27.8%)も多い。

 2019年に学生の被害が報じられたケースは、OB訪問が発端だった。一対一の関係となる個別訪問は被害が起こりがちなので、私は女子学生にはやめるように言ってきた。コロナ禍のせいもあり、個別訪問は数が減り、原因となることも激減したようだ。

 半面、インターンシップや説明会など「公式」な場面がきっかけで被害が発生するようになったとは、何たることだろうか。しかも加害者は人事担当というのだから、弁明の余地はない。

 加害者個人の問題では済まされず、会社全体の採用活動への取り組み姿勢が問われる事態だ。再発防止のためにも研修などの社員教育を徹底すべきだ。

 こういう報道があると「なぜ拒否しなかったのか」と被害者側の非を指摘する人たちがいるが、論外である。もしこれが、万引きなどの窃盗事件ならば「盗られた方が悪い」と言う人はいないはずだ。

 今回の被害者は「断ったら就職に影響するのでは」と思い断れなかったとの報道もある。採用の決定権を持つ会社側がその強い立場を利用して、学生を拒否できない状況に追い込んでいる。悪質極まりない。

 調査では、セクハラを受けた後の行動についてもたずねている。「何もしなかった」(24.7%)が最多で「就活をやめた」(7.8%)人もいた。この事件も氷山の一角だったなら恐ろしい。再犯を食い止めるためにも大学や第三者機関に相談してほしい。

 「就活セクハラ」には日本の就活制度のゆがみが凝縮されている気がする。まずは会社側の徹底研修、意識改革である。

(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

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