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【就活のリアル転載】面接の「鉄則」 もうけを考え、話を聞く 海老原嗣生(2021/6/22付 日本経済新聞 夕刊)(2021/06/29)


 面接で、企業は「自社の仕事と社風に合っているかどうかを見ている」と書いてきた。決して「良い悪い」で点数をつけているわけではない。そして、企業によって仕事も社風も異なるから、評価基準はまちまちだ。だから「どの企業でも評価される黄金則」などというものは存在しない、とも書いた。

 そうすると、面接には万能薬的な処方箋などはなく、要は素をうまく伝えるエピソードを語り、その素を愛してくれる企業に入ればいい、無理してウソをついて合ってもいない企業に入るのは苦痛なだけだ、という結論になる。

 ただし。そうはいっても、企業が企業である限り、共通の「評価軸」というものがないわけではない。そこで、今回に限り、前言撤回で「鉄則」的なものを書いておく。

 よく、学生は自分をいい人にみせようとしきりに偽善的な話を語る。「世のため、人のため」といった類いで、このバリエーションは多い。

 とりわけ、応募動機を語るとき、「事業の社会的意義」とか「お客さんの笑顔がみたい」とか「顧客企業の成長を促し、日本全体を元気にしたい」といった言葉が出る。

 何人も面接している企業側は、その「ありきたりさ」が鼻につくだけでなく「一番肝心なことを忘れてるだろ!」と内心イライラして、こんな言葉を返す。「ならば、NPOや特殊法人を受けたらどうですか?」

 そう、企業の仕事はきれいごとでは済まない。必ず利潤が出る構造になっている。だから、なべて企業は「どうやったらもうかるか」に興味を示し、自分なりにその方法を語る学生が好きだ。1つ目のポイントを要約するならば、「キレイごとより、もうけを考えろ」。まさにそういう人材を企業は求めている。

 2つ目は「語るより聞く」こと。これまた多くの学生は、何を語るか必死に考え、周囲や相手の発言を聞いていない。それでも、個別面接で大人の面接官であれば「いや、私が聞きたいのは」とポイントを再指摘してくれるかもしれないが、集団面接では致命的だ。単に脈絡のない強弁合戦となってしまう。

 逆に他の学生の話をしっかり聞いて主張を理解しておくことが大切だ。合議タイムに入った時、「あなたは〇〇と言いましたが、その点に関しては」としっかり相手の話に合う質疑をできれば、大きく差が付く。

 合議では勝ち負けを競っているわけではない。相手の意見を十分咀嚼(そしゃく)していくうちに「自分よりも相手の方が××な理由で合理的だ」としっかり語り、負けを認めるのも、吸収力や柔軟性という意味で評価されるだろう。2つ目のポイントは「聞く力」だ。

(雇用ジャーナリスト)


     

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