「ちょっと待って。なぜ毎回司会役は男子で書記は女子なんですか?」――。講義の途中で私はストップをかけた。共学校でウェブでのグループディスカッションの練習をした際、2回とも司会は男子、書記は女子で進めようとしたからだ。
1回目は偶然かもしれないと思ったが、2回目は役割を変えて練習するように言ったにもかかわらず、同様になった。同じ大学で男女半々、全員が総合職志望だ。
グループディスカッションでは、多くの場合、司会役と書記とタイムキーパーを決めて進行することが多い。暗黙のルールになっており、特にウェブでのグループディスカッションでは、司会役が決まっていた方が話し合いが進めやすい。なぜなら「Zoom」などを使用した討論では対面よりも「話者交換」が難しくなるからだ。
相手とのタイミングが計りづらく、発言が同時になってしまったり、逆に空白の時ができてしまったり。それを防ぐには司会役がいて交通整理した方がスムーズである。
ところがこの司会・書記の担当決めに性別役割分担が出てきてしまうとは。部長は男子、副部長は女子という慣例が大学には生き残っているのか。
この仕事を28年やってきたが、確かに以前は女子学生に「書記は君がやって」と押し付ける男子学生がいて、注意したことがある。男子学生に理由を聞くと「女子の方が文字がきれいなので」とまことしやかに答えたものだ。
だが今やウェブのやりとりで書記が手書きすることはまずない。パソコンの文書作成に文字がきれいも何もないし、女子の方がキーボードを打つのが速いともいえないであろう。
約30年たった今もこんな「わきまえ」が根強く残っているとは。これがジェンダーギャップ指数世界120位のわが国の学生の現実なのか。
もちろん中には司会役を買って出る女子学生もいるだろうが、もしも司会は男子にと譲って書記ばかりしているとどうなるか。発言回数が少なくなるだけでなく、リーダー役として、まとめ方の練習はできない。
会社に入っても性別をわきまえてリーダーになることを避け続けると、経験不足から管理職になれず、役員への道もないのではないか。就活という社会へのはじめの一歩のところから、ジェンダー教育の必要性を強く感じる。
職場に性別役割分担を持ち込まない。そのためには就職の機会から均等であることを男女ともにしっかり浸透させたい。大学や就活の関係者のみなさまにはぜひ、意識してほしい。
(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/