コミュニケーション力、という言葉ほど学生が就活で悩まされるものはないだろう。とりわけ集団面接などでは、立て板に水で話し続けるライバル学生がいると、「私はあんなふうにできない」と落ち込むものだ。
ただ、心配することはない。何度も言うが、企業は「自社に合った学生」を欲しいだけだ。臆面もなく高らかに話し続ける学生は、彼と合っている会社からは評価されるだろうが、その他多くの企業からは「KY(空気が読めない)」と疎まれるに違いない。
私は、学園祭などに呼ばれると、時折、こんな催しをして見せることがある。20社ほどの企業の人間を招き、まず私が3人の学生と行う集団面接を見てもらう。面接後、どの学生が欲しいか、挙手してもらうのだ。
学生は全く個性の違う人を集める。例えば、一人は気弱で真面目そうなタイプ。一人は明るくKYなタイプ。一人は学級委員長のような非の打ち所のない優等生。さて、結果はどうなるか?
大方の人が、優等生タイプに人気が集中すると思うだろうが、さにあらず、真面目気弱学生にも、KY豪胆学生にも結構な数の企業がラブコールを寄せる。そんなものなのだ。ナマで催しを見た学生たちは「素の自分を愛してくれる企業もある」と皆、ホッとする。
コミュニケーション能力については、私は以下、5つの要素があると考えている。
(1)うまく話す能力(端的にわかりやすく語る)
(2)うまく聞く能力(重要なポイントを聞き出す)
(3)配慮する能力(相手の気持ちを考える)
(4)関係を広げる能力(物おじしない、ずうずうしさ)
(5)関係を維持する能力(人を嫌わない、人に嫌われない)
冒頭例に挙げた、恥じらいもなく話し続ける学生など、実はこのどれにも当たらない(強いて言うなら(4)だろうか)。つまり、大してコミュニケーション力などはないのだ。逆に言えば、悩んでいる人たちも、(1)~(5)のどれかはあるのではないか。
そのことに気づいたら、強みを磨く努力と、それを面接に生かすことを考えよう。
くだんの集団面接でいえば、(2)に秀でる学生は、一通り皆の意見を聞いた後で、似た意見の整理や、わかりづらい点の確認役などを買って出ればよい。(5)の人は、各人の良い点などを感想として述べるのも、あなたらしさが出るだろう。
そうした、自分らしさを生かした対応をしていけば面接は怖くなくなる。そして、KYに語る学生よりも、よほどあなたを欲しいと思う、ピッタリな企業が見つかるはずだ。
(雇用ジャーナリスト)