「最後は大学に泣きつけば、どうにかしてもらえると思ったのが甘かったです」。就職先が決まらないまま卒業した女子学生の相談を受けた。4年生で1、2社受けてみたけれど決まらず、気付いたら3月。大学宛ての求人に2社応募したが採用されず時間切れ。そのまま卒業して今日に至るという。
どんな会社を受けたか聞くと「事務でいいので、事務ばかり受けました」。よくある希望だ。事務を軽く見過ぎではないかと思う。事務に求められる能力を問うと「パソコンスキルでしょうか」。でもパソコンスキルを尋ねると「できません」。
確かに正社員で入社すれば、新入社員研修でなんとかなるのだろう。ただ一旦卒業したとなると、既卒枠扱いとなる会社も多く、なかなか厳しい状況だ。
就活は大学頼み。入社できたら会社の研修頼み。とにかく他人任せがはなはだしい。いったい何歳なのか、とあきれるばかりだ。彼女には事務職を目指すなら、まずはパソコンの資格を取り、就職につながるようなアルバイトをするよう助言した。
それでも彼女を一方的に責めるのはかわいそうな部分もある。彼女は就活のガイダンスに1回だけ出たそうだが、オンラインではモチベーションは上がらず、質問もできない。個別の面談も受けてはいない。
こうしたコロナ下における無業の卒業生をどう救済するかも現実的な課題だ。多くの大学は卒業生の相談にも応じてくれる。既卒でも新卒扱いで採用選考してくれる企業もある。いろいろと打つ手はあるはずだ。
タラレバになってしまうが、コロナ禍という特別な不遇がなければ、彼女ももう少し真剣に就活に向き合えたかもしれない。私が講義をしている大学も昨年はすべてが「Zoom」だったため、学生からの個別相談に応じるのは限界があった。
今年は対面でスタートし、途中でZoomにもなったが、就活を後押ししたいという私の熱意は伝わっている手ごたえがある。質問や相談に来る学生が昨年の倍だ。対面講義によって関係性の構築ができたのだと感じている。
人生全体の長いスパンで考えれば、1年や2年の遅れはどうにでも挽回できる、という考え方もある。ただ新卒とは、今のところ人生で最も有利な就職ができる「プラチナカード」のようなものだ。みすみす期限切れにしてしまうのは単純にもったいない。
学生はすべてを他人任せ、大学頼みでは困る。当事者意識を持って、せめてスケジュール感だけは大切にしてほしい。就活には「締め切り」というものがあるのだから。
(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/