この連載で取り上げていなかったが、就活生にとって必需品ともいえる「就職ナビサイト」というものについて、書いておくことにする。
世の中にはリクナビ、マイナビといった巨大なナビサイトがあり、この両巨頭がまるで就活全体を牛耳っているように思う人も多いだろう。ところが現実は様相が異なる。
私がいたリクルートが運営するリクナビを通して就職先を探している学生は年間8万~10万人ほど。マイナビも同様と聞く。ただ両者を使う学生も多いので、2サイトを通じた就職決定者は、重複を除くと実質12万~13万人程度だろう。これは全体の3割程度でしかない。つまり、圧倒的多数は、2大サイト以外で就職先を探している。
結局こうした大きなナビサイトは、掲載料を支払う体力があり、多数の採用広告の中で就活生をひきつけられるようなエクセレントな企業が中心となる。世に400万事業者があるなかで、ナビサイトに掲載されるのは1万社になるかならないかだから、数的にみても、むべなるかなだ。
昨今、こうしたナビサイト発の「就活生動向」が報じられる。「早くも8割の学生が決定!」などという言葉が躍り、気をもむ学生・教職員が多いのではないか。ただ、これは一部企業とナビサイトに登録する学生たちの動向であり、大勢を示していないと強く言っておきたい。
「じゃあナビサイトなんて一部企業と一部学生のもので、圧倒的多数にとって意味がないものじゃないか」。そんな声が聞こえてきそうだが、それも全く異なる。ナビサイトには登録やエントリーシート作成など様々な「情報を整理する」機能がある。これがなかった時代、就活生が独りで就活をするのはとても大変だった。
就活には、インターンシップ、合同説明会、求人広報開始、企業別説明会、エントリーといった流れがある。ナビサイトから時期ごとに適切な案内が届くのだが、これが当たり前のようで結構役に立つ。就活生にはペースメーカーとして心強い存在になるだろう。
そして、受かりはしなくとも受けてみたい人気企業との接点を提供してくれる。いくらでも簡単に受けられ、結果、多数が書類アウトとなるわけだが、この通過儀礼により「受かる企業の相場観」を学べる。就活学習システムとしては最適だろう。
これらサイトが提供する情報は対象が限られ、全体を表してはいない。ただ傾向値は一考に値する。とりわけ経年変化については気に留めてほしい。毎年同じような企業・学生が対象なのに今年は何が変わったか。それは市場の変化をよく表している。
(雇用ジャーナリスト)