就活の早期化を避けるため、文部科学省などの要請で、新卒採用情報の掲載は3月1日とされている。ところが今年は、2月15日から企業情報を掲載するナビサイトがあった。「すわ! 早期化再燃か!」との声が少なからず上がったものだ。
事情を知る立場からすると、これは間違いだ。昨年までの3月1日情報掲載だと、学生たちはそれを見て精査する暇もなく、次々とエントリーをしなければならない。じっくり咀嚼(そしゃく)する時間を作るために2月15日から見られるようにしただけだ。
たとえエントリーをしたとしても、企業側に情報が伝わるのは3月1日以降となる。その間は誰も抜け駆けできないので、余裕を持てる。とてもいい改善だろう。
ナビサイトは、企業の採用活動の起点となる情報掲載の開始時期をコントロールできる。ペースメーカーとしての最大の役割はここにあるかもしれない。就活時期論争は過去100年にわたり繰り返されてきたが、いくら協定を作っても破る企業が出てくる。協定には罰則も監督機関もないのだから当たり前だろう。
結果、協定など形だけのものとなる。こうした中で「ナビサイト」の規制は効力が高い。大手企業の採用活動はナビサイトなしでは成り立たず、この掲載開始時期を決めれば抜け駆けができなくなるからだ。
現在は3月広報解禁、6月面接開始となっているが、面接の方はコントロールしきれず、早期実施する企業は多々ある。だが、広報解禁自体はナビサイト側がOKを出さない限りどうにもならない。だから、ここが最大の「歯止め役」となっているのだ。
それでも抜け駆けする方法がないわけではない。ナビサイトではインターンの募集は早くから可能だ。ワンデーインターンシップと銘打った偽装採用説明会は後を絶たない。ナビサイト規制をするなら、ここまでを視野に入れるべきだろう。
正直私は、ナビサイトを許認可制にして公的な管理を強めるべきだ、という意見を持つ。広報開始時期をしっかり管理下に置き、ワンデーインターンシップなどもルールを作って「偽装説明会化」を防ぐ。文科省や厚生労働省もナビサイト規制に舵(かじ)を切ってほしい。
早期化による学業破壊を嫌う大学側もこの動きには乗るだろうし、要請をしっかり守っている誠実な大手企業も喜ぶはずだ。そうしてタッグを組み、ナビサイトに持ち掛ける。サイト運営会社の中にも、既にこれを公器と考えて利益を度外視する企業もある。話は案外スムーズに進むだろう。
(雇用ジャーナリスト)