知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】ウェブの替え玉受験 あなたの内定「ブラック」です 上田晶美(2021/10/26付 日本経済新聞 夕刊)(2021/11/02)


 ウェブテストの「替え玉受験」について、余波が広がっている。私も自分の書いた記事がSNSで拡散されたり、テレビでコメントしたりして、様々なご意見をいただく機会があった。その中で感じたのは世代間の格差である。

 50代以上の人にとって、替え玉受験は大学入試での「不正」を連想させる。昭和の時代には実際に替え玉受験が発覚し、大問題となった。裏口入学や試験問題の漏洩などと同じカテゴリーに含まれる感覚だろう。

 ところが若い世代になると替え玉から連想するのは「代行業」のようだ。こうなると一気にイメージが変わってくる。実際にインターネットで検索すると様々な代行業が出てくる。夏休みの宿題から、婚約者の親へのあいさつまでジャンルも幅広いようだ。

 私がコメントしたテレビ番組でも、就活のウェブテストや資格試験を代行したケースが紹介され、代行を依頼した人や、代行業を名乗る人たちが出演した。驚いたのはウェブテストで替え玉受験を請け負っていた学生のコメントだ。「家庭教師のようにアルバイトとしてやっている。おかげで内定が取れましたと感謝され、人助けになっている」と言うのだ。

 そんな不正を「人助け」とは何事か。法治国家としてあるまじきこと。偽計業務妨害罪や詐欺罪などに問われる可能性もある立派な犯罪だ。テレビに出た代行業者は顔を隠し音声も変えている。やましいと分かっているわけだ。

 当然ながら、代行業という業態がすべて悪というわけでは決してない。広告代理店、旅行代理店、弁護士、司法書士など多くの職業は専門性をもってクライアントを代行し、手助けしている。ただ代行と「なりすまし」は全くの別物だ。

 学生のみなさんは「ブラック企業」に入りたくないと言うのであれば、自分がブラックな方法で内定を取ろうと思わないように。ネットで簡単に頼めるからと言って、替え玉を安易に考えてはいけない。

 替え玉受験が発覚した事例はまだ聞いたことはないが、もしも発覚したら懲戒解雇ではないだろうか。ちなみに、これが学歴詐称であれば、公務員で懲戒免職になった例がある。

 新型コロナウイルス下での就職活動も3年目になる。コロナ禍で情報が得にくかったとか、対策が分からなかったという言い訳はできない。ウェブテストは難問が出るというよりも、時間との勝負。すなわち、練習して慣れればできるようになる。

 「ウェブテストの成績だけで採用されるわけではない。仕事で結果を出せばいい」。そう理屈をこねる学生もいるかもしれない。ただ忘れてはいけないのは、仕事は「替え玉」や「なりすまし」で切り抜けられるほど甘くはない、ということだ。

(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

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