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【就活のリアル転載】コロナ下の地方企業 リモート採用に「勝機」 海老原嗣生(2021/11/2付 日本経済新聞 夕刊)(2021/11/09)


 新型コロナウイルスはリモート化以外にも、就職活動に大きな爪痕を残した。移動の制限で、大学周辺の地域で就職を決めた学生が多くなったことだ。

 就職みらい研究所のデータから見ておこう。まず大学のある地域で生まれ育ち、その地域で就職までした、いわゆる「生え抜きっ子」の増減割合を地域別にみると、北海道・東北、関東、中部、関西、九州で増加している。マイナスは四国のみだった。

 一方、他地域から入学した学生、いわゆる「外様っ子」が大学周辺の地域の企業に決まった割合はどうだろう。増減は3地域ずつで地域数では拮抗しているが、増加した地域のプラスは2.8%に対し、減少した地域のマイナス0.7%を大幅に上回る。明らかに「大学周辺で就職する」学生が増えている。

 コロナ禍では遠隔移動ができない。他地域の出身者が地元に戻り就活しようにも「コロナが感染するから」と、親族から拒絶されもした。そんな状況を表しているのではないだろうか。

 地域活性化をうたう国は、若者の東京一極集中の解消を掲げ、地域が求める人材を養成する大学の取り組みを支援している。多くの地方大学にとって地元就職率の向上は喜ばしいことだが、一過性のトレンドの臭いもぷんぷん漂う。今後、移動制限もなくなり、都会の大企業がリモートで地方学生を採用することが増えるだろう。

 では地方企業はどうするか。リモートにはリモートで返せばいい。「攻撃は最大の防御」だ。資本力のない地方の中小企業は都会で採用活動を進める体力はなく、学生の食いつきもよくない。だから攻めに出る企業は少なかったが、リモートなら低コストで都会に打って出られる。

 その際は「地元出身で都会にいる学生」を狙い、「地元ネタ」をキラーコンテンツとすべきだろう。今、大小様々な就職ナビサイトがスカウトメールサービスを行っている。学生に向けて応募勧誘のメールを送るものだが、返信率は低い。無名企業なら0.1%程度ではないだろうか。ただし出身地域を絞れば話は変わってくる。

 サイトによっては高校まで絞れる。メールの文面に「社長は高校同窓」「地元ネタ(たとえば高校近くのたまり場や立ち寄り店)」「地元の名物教師や逸話」などをちりばめる。無味乾燥とした企業自慢ばかりの中、キラリと光るアプローチだ。

 それでも返信率は1%を超える程度、1000通打って十数通程度の反応だろう。大企業ならば意味がないからやらないが、中小ならば、東京・大阪の学生を10名でも集められれば御の字だ。

 説明会も一次面接もリモートでできる。最後のダメ押しとして、夏休みの帰省時に最終面接を設定し、会社見学を兼ねて片道の交通費でも支給すれば、相当、歩留まりは上がる。各地の中小企業は是非、こんな戦い方をしてみてほしい。

(雇用ジャーナリスト)


     

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