採用活動がリモート化するに伴い、今までなかった質問が寄せられることがある。それが「定員」についてだ。
例えば、インターンシップや説明会がリアルで開催される場合は当然、定員という概念がある。会場に入れるか、スタッフが対応できるか、という物理的な制約があり、その上限人数イコール定員というわけだ。
一方、ウェブ上のバーチャル開催にもかかわらず定員を設けている企業が多々ある。応募者のレベル感をそろえ、参加者同士が切磋琢磨する環境づくりという意味で「選考」するならまだ理解できるが、「先着順」で定員を設けている企業は決して少なくない。
企業は少なくとも従来よりはリモート対応の勝手が分かってきているはず。就職みらい研究所のデータでは、2022年卒対象のインターン実施企業でウェブのみの開催は29.4%に達している。グループディスカッションなど双方向性のイベントならば、ある程度は通信環境などシステム上の容量の問題があるかもしれないが、それにしてもリアルほどの制約ではない。にもかかわらず「先着順」なのはなぜだろうか。この辺に企業側の本音が透けて見える。
企業としては採用実績の多い大学に対し、サービスを提供したい。大学内での知名度や人気ランクが上がり、より採用がしやすくなるからだ。実績校であれば採用レベルにかなう参加者も多く、そうした大学の学生により多く参加してもらうことで、採用本番につなげることもできる。企業は、そんなことを考えているわけだ。
逆に、採用する可能性の少ない大学に対しては、サービスは必然的に薄くなる。正直、説明会でもインターンでも多人数に参加されると、本番でも応募が増える。それは選考作業が増えるだけで厄介だ……。こんな大人の計算が働く。それが「定員」に結びつき、「先着順」という隠れみのをまとうのだ。
もちろん、先着順と書く限り、後から応募した人が参加できるなんてインチキはしない。もっと堂々と、この隠れみのを使って「学歴スクリーニング」をする、その手口を明かそう。
インターンや説明会の開催は就職ナビや自社サイトで広報されるが、そこでは「事前登録」に留まる。一方で、企業側は事前登録した学生のリストを手に入れる。そしていざ募集を開始すると、リストの中の「採用実績校の在籍者」から先に勧誘メールを出す。そして残席2割くらいになった時、残りの学生にもオープンにする。
このやり方だと、全員に一応、チャンスだけはあるように見える。実際に残枠2割にうまく入り込めた、採用実績のない学校からの参加者もいる。その実、スクリーニングはしっかり施されている。採用活動がリモート化しても根強く残る「先着順」。裏側にある企業の本音がお分かりいただけただろうか。
(雇用ジャーナリスト)