知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】女性の根強い公務員志望 「働きやすさ」も立派な動機 上田晶美(2021/11/30付 日本経済新聞 夕刊)(2021/12/07)


 「地方公務員試験を落ちまくり、民間企業に切り替えようと思っています。何社受ければよいでしょうか」。大学4年生の女性から相談を受けた。就活エージェントには「15社くらい受けるように」と言われたという。

 本人は2年生の時から公務員を目指して勉強してきており、民間の仕事はあまり研究してこなかったそうだ。手当たり次第受けてもうまく行かないのではないだろうか。そもそもなぜ公務員を目指したのか。そこに立ち戻ってみる必要がある。

 彼女は1年生の時に公務員になったOGの体験談を聴き、地方公務員に憧れを抱いたという。仕事の具体的な内容というより、女性が安心して働き続けられそうな点に魅力を感じたそうだ。実際、地方公務員は民間に比べ、女性管理職の比率も、育児休業の取得率も高い。

 内閣府男女共同参画局のまとめによれば、民間企業(2019年)の係長相当職の女性比率が18.9%のところ、地方公務員(市区町村、20年)では35.0%。課長相当職では民間11.4%に対し、地方公務員17.8%である。

 市区町村では11年に既に、課長相当職以上の女性比率が10%を超えていたが、民間の課長相当職以上の女性比率は18年時点で9.9%。公務員は民間より10年先を行っていた、との見方もできる。民間企業の女性活躍が進められていると言っても「10年先」の職場との違いは大きい。女性の育児休業の取得率も公務員はほぼ100%だが、民間では80%程度だ。

 そもそも仕事の中身で判断すべきでは、との声も聞こえてきそうだが、女性活躍推進の過渡期である現在、女性が「安心して働き続けられる」という条件を重視するのは理解できる。

 それらも踏まえ、簡単に公務員という仕事をあきらめていいのか問うたところ、二次募集が1つだけ見つかったというので、まずはそれに注力しようという話になった。

 彼女にとっては、まずは公務員試験を受け尽くし、民間企業はその後だ。もちろん、卒業と同時に働き始めることは大切なことなので、結果次第で民間に切り替えるか、就職浪人して公務員を再度受けるかは、改めて考えなくてはならない。

 この時期の方向転換は熟慮が必要だ。手当たり次第に会社を受けて、仮に内定した場合、簡単に内定辞退できる時期ではない。一旦民間に入った後、公務員に転職する方法もあるが、専門性がないと公務員への転職はしにくい。今から専門性が身につきそうな企業に入れるか不安もある。

 就職浪人という選択肢もあるが、新卒という人生で最も有利な就職ができる「プラチナカード」を捨てることになる。自分が本当に進みたい道は何か、その道に進みたい理由は何か。分かれ道で迷ったときこそ、出発点に立ち返るべきだろう。

(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

前のページに戻る