知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】採用の学歴フィルター 「親ガチャ」逆転を阻むな 上田晶美(2021/12/14付 日本経済新聞 夕刊)(2021/12/21)


 「学歴フィルター」についてインターネット上で話題になっている。今さらか、という気もするが、就職情報会社から学生に送られた一斉メールの件名に、大学名の頭文字と思われる漢字が入っており「○○以下」とされていた件が発端になっている。

 「○○」は大学入試の偏差値によるグルーピングで、大学受験経験者にはおなじみの表現。就活には学歴フィルターがある証拠のようにも映ってしまった。

 「偏差値」を基準に「以下」という言葉が使われたことには不快感も募る。当該大学の学生は傷つくし、これから就活という時期に意欲を失うのではないか心配になる。

 そもそも学歴フィルターとは何か。学歴は文字通り学業の経歴を指すが、この場合は大学の中での入学難易度を表す偏差値による振り分けを指す。現在の日本の大学進学率は50%を超えるため、同じ大卒の中での差異をつけるための「偏差値フィルター」になっている。

 企業側から見ると、特に大人数を採用する大企業においては、採用予定者を大学別に設定しているところもあると聞く。例えば、国立大卒何人、早慶上理何人という具合だ。

 過去の入社実績に合わせて計画することで効率化を図っているのか。その企業からのオーダーを受け就職情報会社は学生を選別してメールを出しているようにも思われる。

 一般企業なら何をしてもいいという意見は通らない。特に大企業には公共性が問われてしかり。会社員が大半を占める我が国において、就職に関する機会の均等化は必須であろう。

 しかし、驚いたのは今回のこの誤送信に関してのネット上の若い世代からの反応である。もちろん反発意見多数だが「学歴フィルターがあるのは当たり前だ」との意見もかなり見られた。「本人の努力の差だから仕方ない」というものだ。だが学歴、偏差値は本当に本人の努力の差だけと言い切れるだろうか。

 ある教育機関の調査によれば、小学5年時の偏差値と高校3年時の偏差値は相関関係が高いという。小学5年生の偏差値は家庭環境に大きく左右されるものであり、それは「親ガチャ」に他ならない。

 「親ガチャ」を逆転できるのは就職である。そこに学歴フィルターが大きく影響しているとなると、格差の固定化を助長していることになりはしないか。

 学校というものには、そこに通う生徒学生にとって様々な思いがあり、友がいて、愛校心がある。差別的な表現は多くの人を傷つける。

 そういった情緒面だけでなく、格差の固定化を招く問題をはらんでいる。学生のみなさん! 学歴フィルターのある会社だけではないし、実力主義の会社は多い。自分の実力を伸ばしてほしい。

(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

前のページに戻る