知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】替え玉受験のリスク 後悔する「その場しのぎ」 海老原嗣生(2021/12/21付 日本経済新聞 夕刊)(2021/12/28)


 性検査は、性格系のテストと国語・算数系のテストの2要素からなる。このうち、性格系のテストは替え玉の意義が乏しいため、15年以上前からリモート化されていた。一方、国語・算数系は替え玉受験が起きる可能性が高いため、リモート化はされず、テスト会社が提供する「テストセンター」での受験方式が広まった。

 さらに2015年から採用活動が後ろ倒しされ、個別選考が遅くなった企業は早期の段階で、大量に応募してくる学生に適性検査を受けさせるようになった。結果、テストセンターの存在が重宝されていく。
こうした中、コロナ禍でテストセンターにさえ行けない状況となり、適性テスト全体をリモート化する方向へと舵(かじ)が切られた。これが前回までの要旨となる。

 そして、案の定、替え玉受験が大きな問題となったのだ。これは、テストが得意な学生が他者のなりすまし受験をするなどという生易しいものではない。

・ネットフリーマーケットなどで、Webテスト解答集が売買されている
・検索エンジンで調べるとWebテスト代行業者が多数ヒットする
・SNS(交流サイト)のオープンチャットで答えを求める投稿が大量にみつかる

 こんな状況なのだ。

 テストを購入すると、メルマガ登録のように扱われ、販売者は「○月の最新版!」「匿名配送可」「おまけ付き」という惹句(じゃっく)で、企業別の個別問題まで販売し続けるという。素人商売とは言えないレベルまで来ている。

 このような販売行為は、テストという知的財産の複製権や譲渡権などに関わる著作権侵害に当たる可能性がある。試験業務全体を混乱させ、再試験が必要な事態を生じさせるなどの状況に至った場合、偽計業務妨害罪などに問われる可能性もある。

 騒ぎが大きくなれば、刑事事件化も含めた司法介入すらあり得るだろう。学生側も、違法業者からの購入が明らかになれば、内定取り消しの合理的な理由ともなり得る。

 何でもネットで手に入る時代だからこそ、気を付けてほしい。その「気軽な悪気ない行為」は、あなたの将来を台無しにするリスクがあるのだ。

 何より、国語力・算数力が問われるのは単なる採用のためのスクリーニングではなく、仕事で必要になる能力だからだ。替え玉やカンニング行為で上げ底をして、難関企業に合格したとしても、日常業務についていけず、苦しむことになる。その点についても真剣に考えてほしい。

 人気ランキング上位の企業に入っても、それで人生は終わりではない。そんな就活勝者が、数年して泣く泣く転職するケースを多々見てきた。まずは「自分に合っている企業」を見つけること。それが本当の就活勝者だ。

(雇用ジャーナリスト)


     

前のページに戻る