知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】アナウンサーになりたい その仕事、AIと戦えるか 上田晶美(2021/12/28付 日本経済新聞 夕刊)(2022/01/04)


 「アナウンサーになりたいんです」と大学1年生が相談に来た。コロナ禍で部活動などが思った通りにいかないもどかしさがあるという。アナウンス研究会にも入っているが、その活動がままならないらしい。

 根本的に「なぜアナウンサーになりたいのか」と聞いてみた。「中学時代から放送部に入っていて、放送の楽しさを知ったからだ」そうだ。1年生の本音としては何の問題もない。ただ彼女が3年生の就職活動まっただ中ならばどうだろうか。

 志望動機で自分の過去を一人語りしても、誰も耳を貸さないだろう。しかもアナウンサー志望者の中のいったい何割が放送部やアナウンス研究会に入っているか。大勢の中に紛れてしまうだけだ。

 志望動機を考える場合、大切なのは未来志向だ。過去の経験を先に話すのではなく、未来の希望やビジョンを語ること。どんなアナウンサーになりたいのか、何を伝えたいのかを中心に組み立てよう。

 地元の小さな日常のニュースを届けたい。国際紛争の現場からリポートがしたい。何でもいい。その次に、その理由につながる過去の経験を語っていけばいい。時系列は逆になるが、先に未来の話から入った方が、筋道が立って理解されやすい。これはアナウンサーに限らない。他の業界、職種でも同じだ。

 就活は「なぜ」という質問の連続だ。それに答えていく作業が深掘りである。なぜこの業界に興味を持ったのか。中でもなぜうちの会社に入りたいのか。深掘りは決して圧迫面接ではない。深掘りに応じられるだけの準備をしていきたい。

 志望業界の選択の際、考えてほしいのは「その仕事はAI(人工知能)に取って代わられることはないか?」という問題への答えだ。企業が直面する問題はそのまま就活生にとっての課題でもある。

 既にテレビニュースでは「AIによる自動音声でお届けします」というコーナーがある。スムーズな発声で人が話しているのと遜色ない。もしも字幕が出なければ、人が話していると思って聞き流しているところだ。アナウンサーの未来はAIにできない分野を生み出していかなくてはならない。

 現役アナウンサーの人に聞くと「アナウンス学校や部活動で話す技術を磨くより、言葉集めをしなさい」とおっしゃった。アナウンサーは語彙力が豊富でないと務まらない仕事だ。言葉を知らないと、それこそAIに取って代わられる。記憶力ではコンピューターにはかなわない。

 これもアナウンサー以外の仕事にもあてはまる。どんな仕事も将来AIに置き換わられそうだと、採用は少なくなるだろう。金融業界、流通業界しかりである。過去の自分を見つめるのは大切だが、常に未来の自分を意識しよう。

(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

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