新型コロナウイルスの影響で適性検査までリモート化され、替え玉受験やカンニング行為が横行し出した。その点について、前回は学生に苦言を呈した。今回は、企業側に対して反省を求めることにしたい。
リモート化に伴う替え玉受験やカンニング行為に対しては早速、対応策がとられた。大手テスト会社によるリモート受験者をWebカメラで遠隔監視するという方法だ。
受験者には端末のカメラ機能をオンにするよう求め、テスト会社側の監視員が映像で不正行為をチェックする。これは欧米でも広がり、デファクトとなりつつある。
ただし、この方式には難点がある。まず、監視員のキャパシティーの問題だ。一人で何百人も担当はできないから、かなりの人手が必要となる。必然、サービス料金は高くなる。
また、深夜や早朝などは監視員がそろえ難い。だから受験する時間を限定せねばならない。とすると、海外留学生などが現地で受験することも難しくなる。これではリモートの良さが生かし切れていないだろう。
そんな中、ヒューマネージ社が面白いサービスを始めた。不正行為にはパターンがある。AI(人工知能)にそれらを覚え込ませ、無人で監視を行うというものだ。これならつい見逃しがちな小さな不正さえもこぼさず押さえることができる。料金も安価で24時間提供が可能だ。
たとえルックスがよく似ていても、AIならば苦も無く判定できる。逆にAIであれば、写真撮影時よりも太った・痩せた・むくんだ、といった体調変化による容貌差も「同一人物」と判断できる。
このように技術は進歩しており、正確・大量・常時・安価なサービスが利用できる時代になっている。積極的に活用すれば、学生も企業もリモート化のメリットを享受できるだろう。
ただ、そんな時代だからこそ、企業側にも襟を正してほしい。こと採用選考に関しては、個人と企業の関係が「昭和」のままだからだ。
いまだに不採用通知すら出さず「〇日までに返答がなければ落ちたものと思うべし」で通す企業が少なくない。Webならば大量の通知が苦も無くできるのに、だ。学生にメールで応募させているのだから、企業もメールアドレスに返信で対応できるはずだ。
適性検査の結果も企業は守秘で通している。自社の応募層の得点分布や、採用最低ラインなどは公表してもよいのではないか。
きちんと公開すれば、最低点が高い企業には自分は採用されないだろうと判断して応募する学生が減るなど、業務の効率化にもなる。もちろん、情報公開すれば学生からの好感度もアップする。
今や、情報はタダではない、が常識だ。「取るなら、きちんと扱い、そして返せ」と声を大にして言いたい。
(雇用ジャーナリスト)