知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】「やりたいこと探し」の呪縛 仕事を知る中で見えてくる 上田晶美(2022/1/11付 日本経済新聞 夕刊)(2022/01/18)


 「やりたいことがわからない」と娘が言って悩んでいる、というご相談を親御さんから受けた。まずは親子でそういった話ができる関係にあることが、よい状態だと思うとお答えした。

 昨今、親子が仲良しになっているとはいえ、こと就職に関する話題となると、話し合いがうまくいっている親子がすべてではないからだ。

 就活生の親御さんからの質問で多いのは、お子さんの就活している様子が見えない、というものだ。子どもに直接聞いてみても「ほっといてくれ」と疎ましがられ、親は戸惑い不安になるという。世の中で「コロナ禍で若年層の失業、貧困」などと騒がれていることも、不安に拍車をかけている。

 そんな親御さんに対し、私がお答えするのは「親は見守るしかない」ということに尽きる。まずは大学のキャリアセンターに行かせ、それが難しいようなら「お子さん自身からこちらにご連絡ください」と伝えるようにしている。

 親がいくらやきもきしたところで、就活するのは子どもであって、小学生の時のように学校までついて行ったり、教室の後ろで見守ったりできないからだ。その後お子さんが直接来て相談を受けることもあれば、そのまま連絡がない人もいる。

 ただ先日、珍しいケースがあった。親御さん自身が「自分の親としての関わり方を見直すために」と言ってこられたのだ。毎日顔を合わせる親子は、ついつい余計なことを言ってしまいがちなので、それも良い考えだと思い、面談させていただいた。

 お会いすると、ご自身も心理系のお仕事経験がある方で、お子さんを見守る姿勢には感心するばかりだった。就活の現状をお話し、関わり方はそのままでいいと思う、とお伝えした。

 冒頭の娘さんの相談に戻ると「やりたいことがわからない」というのは、今の時期に多い不安で、特異なことではない。3月の就職情報解禁に向けて3年生、短大1年生の就活が本格化する今、自己分析を始めると陥るところだ。

 どんな会社を受けるのか。業界は? 職種は? と突然考えてみても、具体的には右も左もわからない。自分のやりたいことは? と考えても「わからない。何もない」となってしまう。

 もちろん趣味のレベルならば、やりたいことは何かしらあるだろう。だが、学生の趣味が仕事につながることは、そうそうない。本気でやりたいならば、例えば音楽系の人などは長いスパンで考えて、30歳までなどと期限を切って取り組めばいいと思う。

 そもそも「やりたいことがわからない」のは仕事が具体的に見えてこないからである。「やりたいこと探し」の呪縛から解かれるには、会社説明会に参加し、仕事を知ることだ。「やりたいこと」は知った中からしか選べないのだから。

(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

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