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【就活のリアル転載】学歴の逆フィルター 「入ってくれる学生」を選ぶ 海老原嗣生(2022/2/15付 日本経済新聞 夕刊)(2022/02/22)


 学歴フィルターとは、就職ナビサイトで自社に興味を持ってくれた学生(=プレエントリー者、以下登録者)に対し、企業が説明会や応募に勧誘する順番などに差異を設けることだと書いた。数万人も登録者がいる中、企業は数を絞らなければ説明会運営も面接対応もできない。

 ところが大企業の採用実績校をみると、あまり名も知られていない大学が多数並んでいる。その多くは1人のみの採用だが、それがかなりの校数に上る。なぜこのようなことが起きるのか、いくつか理由がある。

 まず、スポーツなど何か特技で著しい実績を持っていた学生。先々週書いたとおり、組織での業務遂行は、ハードなサークル活動に相通じるところがある。そこで、大学名関係なく、こうした秀でた活躍を成し遂げた学生を少数採用する。

 2つ目は、最近は下火になっている「コネ」採用だ。企業業績が苦しい昨今、昔ほどコネ採用は多くはなくなったが、それでも関係者子息の「修業・研さんの場」として少数、受け入れをしている。

 最後に考えられるのが、大企業の採用は「全大学に」開放される部分があることだ。これを詳しく説明しておこう。たとえば、説明会やインターンシップの受け入れ時、件(くだん)のごとく、自社に登録している学生のうち、採用実績の多い上位校から、勧誘メールを出していく。そうして、枠が8割方埋まった頃に、全登録者に一斉メールを送る。こんなオペレーションをする企業が多い。

 少数の残枠に数万の登録者が応募するので、すぐに満席となる。ただそこには本当に色々な大学の学生が集まる。そうして少数ながら多くの大学の採用実績が保たれている。

 学歴選抜で部外者が見落としがちなのが「逆フィルター」だ。上位校ではなく中下位校を優先する企業がままある。企業が学生を勧誘する際に重視するのは「応募してくれる確率」と「応募者が入社に至る確率」の2点だ。不人気企業の場合、条件の良い有利な学生たちは見向いてもくれない。仮に応募→内定と進んでも、最後で辞退される確率が高い。だから、あえて上位校を対象から外すのだ。

 学歴フィルター論争の火付け役となった中堅スーパーなど、まさにこのケースではないかと私は考えている。仮に私の想像通り「逆選抜」だった場合、批判の内容も大きく変わるはずだ。ところが該当企業も就職ナビも「学歴フィルターはない」の一点張りのために議論は深まらず、従来の話をなぞる形となった。

 企業も就職ナビも、あるものをないというのはやめにしよう。それは部外者が思うほど単純なものではなく、また、全く非合理なものとも言えないということをつまびらかにし、その上で、より良い選抜方法は何があるのか、という論議を待ちたいところだ。

(雇用ジャーナリスト)


     

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