「6月1日から個別の面接が解禁になる」という就活ルールが、曖昧さを増してきた。経団連が設けてきた企業の採用活動のスケジュールは、2021年春の新卒採用から政府主導のルール作りとなった。6月1日解禁のルール自体は残ってはいるが、採用する側の経団連自身がルール作りの立場を離れたこともあり、これを絶対視する企業は少なくなってきた。
それでも現状、そこそこ6月1日解禁が守られるだろう。大手企業の新卒採用が盛り上がりに欠けているためだ。
まず、宿泊・飲食・輸送・旅行産業が新型コロナウイルスの影響による業績悪化で採用数を減らした。IT(情報技術)やネット系も株価は低迷傾向で、ひところほど新卒採用に熱が入っていない。金融や不動産関連も同様だ。
というわけで、今年は採用早期化に舵(かじ)を切る企業はそれほど多くなく、近年通り、以下のような採用スケジュールになると読んでいる。
●3月以前に内定を出す企業……外資や中堅ベンチャー企業など
●3~5月に内定を出す企業……新興系大手や一部の経団連傘下の企業
●6月1日以降に面接・内定……経団連の中核を占める企業とその系列企業
このスケジュールに落ち着いた理由は、もう一つある。新卒向け求人サイト(就職ナビ)の広報解禁日が3月1日だったからだ。6月1日面接解禁ルールには、新卒求人の広報を3月1日以降とするという付則がついていた。
政府主導でこのルールが温存される限り、大手就職ナビは3月1日以前に求人広報をオープンするわけにはいかない。この「ナビ縛り」は、採用早期化の相当大きな歯止め役となっている。
では、就職ナビがオープンしていない2月までに内定を出す企業は、どうしているのか? そのカラクリはもう何度も書いた。この時期に内定を出す企業の主体となっている外資やベンチャー企業だと、自社ホームページのみでは学生は十分に集まらない。そこで、インターンシップと銘打って学生募集を行う。
これなら、就職ナビの「インターン生募集ページ」に大手を振って掲載できる。つまり、偽装インターンシップによる採用活動が行われているのだ。
リクルート傘下の就職みらい研究所が発表しているデータを見ても、インターンシップの開催件数は2月が最大となっている。こんな裏口コースが見て見ぬふりをされている。やがて景気が回復すれば、このコースの活用企業が増え、大学3年次からの青田買いが問題になるだろう。
学業阻害、ひいては学業破壊が騒がれる前に、ぜひともこの抜け道潰しを「政府主導」で行ってほしいところだ。
(雇用ジャーナリスト)