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【就活のリアル転載】第1志望へのこだわり 夢を追うなら徹底的に  上田晶美(2022/3/22付 日本経済新聞 夕刊)(2022/03/29)


 「第2志望の業界に興味が持てません」と学生が相談に来た。私は講演で、志望業界は1つに絞らず2~3あった方がよい、と伝えている。ある年に業界特有の理由で採用が激減することもあるし、残念ながら本人が向かない場合も考えられるからだ。第2志望の業界がないと、受ける会社の数自体も減ってくる。

 第1志望を受け終わってから第2志望に移行できればよいが、3月中にエントリーシートを出しておかないと、受けられなくなる会社も多々ある。第2志望も同時に検討しておかないと、第1志望が全滅だった場合、その年に関してはやり直しが難しくなる。

 ただし、彼女の場合は第1志望の業界ですでに30社はエントリーしていると言う。昨年の就活ナビ各社の調査では、平均エントリー数は20~30社。コロナ禍でエントリー数は少なくなる傾向にある。彼女は30社エントリーしているのであれば数としては十分に思える。

 第1志望業界だけで30社もエントリーできるのは非常に珍しい。彼女の思いの強さを感じた。彼女の志望している業界は映像制作。そういったどちらかというと特殊な希望の場合、なかなか多くの会社を受けられないものだが、彼女は独自に調べあげていた。

 例えばテレビの制作会社ならば、テレビ番組を見ていて、最後のテロップに出てくる制作会社を書き留めておき、リストアップする。そこから会社を調べて、プレエントリーを進めているという。本気度の強さを感じた。

 彼女のように希望が明確で、どうしてもその仕事に就きたいという強い執念があるならば、一旦は全力でそこにかけてみるのもよいだろう。自分のやりたいことを追求して本気で30社受けられるならば、第1志望にだけこだわるのも一つのやり方だ。

 ただしその場合、今年は正社員就職をあきらめるという覚悟も必要だ。私は就活のコンサルタントではあるが、どこかの会社の正社員になることだけを押し付けるつもりは毛頭ない。将来やりたい夢があるのであればそれを全力で応援したい。夢を追いかける人生ほど素晴らしいものはないと思う。

 ただし、その場合は期限を設ける方が良いかと思う。30歳まではミュージシャンになれるように頑張ってみるとか、俳優になれるように努力してみるといったように。就活はまず第一に夢をかなえるチャンスである。チャンスをつかむんだと思って就活に臨めるのはステキなことだ。

 次に彼女が相談に来れば、映像制作関係でも小規模な広告代理店や動画を配信する側のネット系の会社を提案してみたい。だが、まずは第1志望という「本気の夢」を追いかけることを阻みたくない。

(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

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