知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】働きやすい会社の見極め 「決定層」に女性はいるか 上田晶美(2022/4/5付 日本経済新聞 夕刊)(2022/04/12)


 女性が働きやすい会社の調べ方を女子学生に尋ねられた。一番わかりやすいのが「くるみんマーク」の認定だ。仕事と子育ての両立支援に取り組む企業を厚生労働省が認定している。育児休業の取得率など10の基準があり、約3000社以上が認定されている。より基準の高い「プラチナくるみん」もある。

 入社すぐ子育てというケースはまれだろうが、一事が万事で、子育て支援に取り組んでいる企業は人を大切にする姿勢があり、ダイバーシティーやSDGs(持続可能な開発目標)への配慮とも連動しているだろう。

 今の男子学生からは男性育休についても質問される。4月施行の改正育児・介護休業法は男性の育休取得を促進するのが狙いだ。男性の育休取得を進めれば管理職など上の世代の意識が変わり、会社全体の働きやすさにもつながる。

 転勤制度の柔軟性も確認しておきたい。例えば、結婚相手の転勤に伴い帯同できるのか。または無理なら一定期間休職できるのか、などである。男女とも最近の就活生が気にするポイントだが、特に女性が会社を辞める理由になりやすい。

 女性の働きやすさ。この言葉が死語になればよいと思うけれど、実情はそうはいかない。日本経済新聞の調査では、1000人の女子学生のうち2割が「活躍を見込めない企業は選考を辞退した」と答えたという。理由の1位は「産後働き続けている女性が少ない」が40.1%で最も多かったそうだ。

 また、ジェンダーバイアスを感じたと答えた人の中では「採用や配属、昇進に男女差がある前提を感じた」が86.6%に達したという。学生時代までの教育環境は女性が差別されることは少ない時代になってきた。だが一歩社会に出ると男女の不平等はまだまだ存在し、昇進の場面では色濃く出る。

 女性の管理職の数、取締役の数を見ることも大事だ。女性の取締役を置かなくては海外の投資家にそっぽを向かれる時代だ。女性役員といっても社外取締役を置き、月1回、取締役会に出るだけという会社もあるが、それでも改善の第一歩だ。

 男性からは「女性を優遇してむしろ逆差別だ」という声も聞こえてきそうだが、今まで下駄(げた)をはかされてきた男性も多いのではないか。男性に対する期待値の高さや研修が給与に反映され、女性の意欲を大きくそいでいることを忘れないでほしい。往々にして、差別している側は差別されている側の痛みに気づかない。

 管理職や取締役と言われても、就活生にとってはまだ先の話かもしれないが、決定権を持つ層に女性がいなくてはジェンダー関係の制度改善は見込めない。組織の現状だけで「やりたい仕事」まで諦めるのはもったいない。「入社したら自分で制度を変えていく」ぐらいの気概で就活に臨んでほしい。

(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

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