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【就活のリアル転載】ESは使い回していいか 「素」の自分ぶつけよう  海老原嗣生(2022/4/12付 日本経済新聞 夕刊)(2022/04/19)


 会社説明会が終わり、本番応募の時期になるとよく聞かれるのが、エントリーシート(ES)についての書き方だ。中でも多くの学生や職員の方に言われるのが、「ESは使い回してもいいものか」という話だ。もちろん、企業側のお題目が全く異なれば、使い回すことなどはなからできはしない。

 ただ、企業もそれほどオリジナリティー豊かな課題を用意していたりはしない。類似するテーマを与えられることがよくある。そうした場合、ESは使い回すべきか否か。

 答えの前に「面接とは何のためにあるのか」をもう一度確認しておきたい。

 学生の側からしても、企業側からしても、就職・採用という行為は一大事だ。学生にしてみれば、社会人生活の第一歩であり、それが後半生に与える影響は多大である。企業にすれば、1人採用した場合、諸経費込みで年間数百万円の人的関連経費が発生し続ける。だからともに、「間違いのない」選択をしたい。そこで、面接で確認作業をしているわけだ。

 その際、企業が見ているポイントは何だろうか。それは「うちの仕事がこなせるか」「うちの仲間と合うか」の2点が大きい。これらがミスマッチとなった場合、業績はなかなか上がらず、会社に定着もしない。この2つを合わせて言うなら、面接で「会社や仕事との相性」を見極めていると言い換えられるだろう。

 だから、企業は学生の「裸の姿」を知りたいわけだ。そして、「合っている」人だけを採りたい。間違って合っていない学生を採用した場合、それは企業も学生も不幸になるからだ。「不採用」となった学生は、えてして落ち込み、そして受かった学生が羨ましく思えたりする。ただ、それは全くの間違いだ。

 不採用とは単にその企業に「合っていなかった」だけのことであり、受かった学生は合っていただけ。偉くもなんともないのだ。むしろ「合ってもいない企業に入らなくてよかった。落としてくれてありがとう」と考えるべきだろう。

 ここまで読めば、ESの使い回しについて、もう答えはお分かりだろう。ESには「素(す)」の自分をとてもよく表す話を書けばいい。

 それで落ちたら、「合ってない」と思うだけのこと。とりつくろって、その企業が望むような「なりすまし」をしても、面接でたいていは見破られるし、うまくだまし通したとしても、入社後にとてもつらいことになる。素の自分をどの企業にもぶつけて、それでも受かれば、その企業は本気であなたを愛してくれるはずだ。

 だから、しっかりと良いESを作り、それを使い回すことを良しとする。

 ただし、再度書くが、企業の聞いている趣旨が異なった場合は、きちんとそれに対応して書き直すことは忘れずにいてほしい。

(雇用ジャーナリスト)


     

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