ある公立女子大学で、入学したばかりの女子学生に講義をした。入学早々ではあるが、就活は最終学年ではなく、予想以上に早く始まることについての覚悟と準備について話した。
現状では3年生からインターンシップが始まることを考えると、意外とうかうかしていられない。のびのびと学べるのは2年生までで、もし留学をしたいのなら2年生までがよい。4年間の計画を立て、今後の進路を早めに考える機会を持ってもらうための講義だ。女子大ということで、特に女性の働き方の難しさをどうとらえるか話した。
まず、これまで通った学校で女性の校長先生がいたかどうか振り返ってもらった。すると半数近くが小学校では女性の校長がいたことがあると手を挙げたものの、中学校、高校ではぐっと減って1割以下になった。そのことに疑問はなかっただろうかと問いかけた。
文部科学省の2021年の調査では、公立学校の校長で女性の割合は小学校が約23%、中学校は9%弱、高校は8%強だった。管理職全体でも女性は約21%にとどまる。
ある女子学生が「女性は出産というハードルがあると思うが、育児休業を取って戻る人が増えているはず。それなのに昇進できないのはなぜか」と質問してきた。核心を突いた質問だ。
一般的に学校や団体などでは昇任試験を設けるところが多い。試験と聞くと平等なようだが、誰でも受けられるわけではなく、受験資格を満たす必要がある。例えば経験年数や実績評価、上司からの推薦などだ。まずその資格要件を満たすところで男女比が異なり、男性優位となっている可能性がある。
管理職になろうがなるまいが本人の自由意思であり、他人がとやかく言う必要はない。だが女性の管理職が約2割にとどまるのは、バランスが悪くはないか。それを見て育つ生徒、学生がジェンダーバイアスを刷り込まれないかと危惧する。
校長は男性で、部下は女性という男女の役割分担の図式に慣れていたとしたら恐ろしい。大学教育の中でそんな呪縛は取り払っていってほしいものだ。
教員は学生にとって一番身近な職業であることから例に挙げたが、それでも教育の分野は全職業の中でもジェンダー平等が進んでいる領域である。
日本は世界経済フォーラムが昨年発表したジェンダーギャップ指数で120位だった。調査対象の4分野で、教育は健康と並び日本では比較的平等な領域であるが、その教育の分野ですら女性の管理職は約2割。政治や経済の分野では、さらに男女の差は拡大する。
大学低学年のみなさんは、就活について早めに方向性を考えてほしい。その際、女性としての難しさも現状では避けて通れない問題であることを念頭に置いて、何年生でどんな経験を積むか計画を立てておこう。
(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/