知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】広がるハイブリッド就活 親子で話し合う契機に  栗田貴祥(2022/9/6付 日本経済新聞 夕刊)(2022/09/13)


 私が所長を務める研究所では長年、大学で「保護者向けセミナー」を行っている。「以前と大きく変わった今の就活事情を理解しておきたい」とのニーズは高く、コロナ禍の今はさらに顕著だ。いまは主流となりつつある、オンラインと対面のハイブリッド就活のあり方にも高い関心が寄せられている。

 コロナの流行が始まった2020年、大卒求人倍率は大きく下がると懸念された。しかし、就職氷河期やリーマン・ショック時ほどの落ち込みにはならず、22年3月時点で1.58倍と堅調に推移している。

 大きく変わったのは企業との接点の持ち方だ。当研究所の22年大卒生への調査では、ウェブ面接の経験者は約8割となり、合同・個別説明会、面接選考を通じて対面のみだった学生は1割を切っている。

 ウェブと対面のどちらがよいかを聞くと、合同説明会は68.9%、個別説明会については55.5%の学生がウェブ方式を支持。「移動の手間や交通費がかからない」「効率的に多くの企業の説明会に参加できる」などの理由により、過半数がオンラインでの説明会実施を希望している。面接では約46%の学生が対面を希望しており、オンラインとリアルの使い分けはより進んでいくと考えられる。

 オンライン面接を支持する声には「普段の生活空間にいるので過度に緊張しなくてすむ」というものも多い。一方、実家に暮らす就活生からは「面接中の会話を家族に聞かれたくない」との切実な声もある。オンライン前提の就活スタイルの今、どう配慮すべきか、家族間でコミュニケーションをとっておくといいだろう。

 この2年の興味深い変化に「卒業後の進路を考える上で影響を与えたもの」に関する調査結果がある。「親」と回答した学生の割合が51.4%で、コロナ禍の2年間で約10ポイント上昇しているのだ。

 学生と会話をしていても「親がリモートワークになり、仕事の雰囲気が伝わってくる」「仕事中に笑い声が聞こえてきて、楽しそうだなと発見があった」などの声を聞くようになった。

 コロナ前は、両親がどんな会社で、どのようにして働いているのか関心の薄い学生も多かった。自宅で過ごす時間が増えたことで「もっとも身近な社会人」の働く姿を見られるようになったとも考えられる。

 同居の有無や家庭環境により異なるのですべてに当てはまるケースとは言い難いが、働き方の変化による一つの側面ともいえる。

 学生側にとって、自分をよく知る家族や身近な社会人からのアドバイスは、信頼できる情報提供になる。自己分析や内省にもいい気づきを与えそうだ。子どもと仕事について話し合うことで、保護者にとっても自身の仕事観を整理するいい機会になるかもしれない。

(リクルート就職みらい研究所所長)


     

前のページに戻る