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【就活のリアル転載】終盤の就活戦線 欧州はより競争激しく 海老原嗣生(2022/9/20付 日本経済新聞 夕刊)(2022/09/27)


 いよいよ秋風が吹く季節となり、就活戦線も終盤に入った。まだ就職先が決まっていない学生や親御さんは、切羽詰まった思いでいるのではないか。

 毎度同じような話になってしまうが、まだまだこの後、就職活動はいくらでも成就するので、あまり暗い気持ちにならないでほしい。厚生労働省の発表する新卒学生の就職状況調査では、10月1日時点の内定率は近年70%前後だ。最終的な内定率は95%程度となるので、数字的にはまだまだこれから決まるのがわかる。

 しかもこの調査は、対象大学が国公立や大手有名私立が中心となるので、一般大学よりも数字は相当高い。普通レベルの大学であれば、これから就職先が決まるという人が3~4割いるだろうと、私は思っている。

 私は日本の就活の仕組みには功罪両面があると思っている。欧米の仕組みはあまりにも過酷だ。とりわけ欧州の「普通レベルの学生」の就職は厳しい。未経験者採用枠などは小さく、新卒でもいっぱしに仕事ができなければ職にありつけない。

 例えばフランスなどでは、そのためにインターンシップとは名ばかりの「長時間雑務」をして、仕事を覚えねばならない。3年制が基本の大学で、フルタイムに近いインターンシップを低賃金で長期間して仕事を覚える。

 ドイツでは大学などへの進学前に各企業の訓練生募集に応募し、書類選考と面接を経て内定を勝ち取った学生が、デュアルシステムやデュアルストゥジアム(企業実習と学業の両方をこなす仕組み)という職業訓練に進んだりする。こうして2~3年程度、実務と訓練を積むが、就職の内定をもらえるのはそのうちの7割程度となる。

 とかく日本人は欧州の優遇されたエリートのケースと比較して「日本はだめだ」というが、普通レベルの学生であれば、欧米の厳しさはとても日本の比ではない。こうした点では、日本の就活の仕組みは「良い」ともいえるだろう。

 また、欧州の場合、キャリア教育が進んでいるといわれるが、これも誤解がある。教育というよりは「烙印(らくいん)」と呼んだ方がいいかもしれないほど過酷な状況だ。

 一部の国では義務教育の間に、2~3割の生徒が落第をする。彼らの多くは高校に進めない。残りの生徒たちも、技能系高校に進むと卒業資格が異なるため、普通大学に行きづらいことになる。大学は学費が安いが、その分、学生の学費に頼らない経営をしているため、何のためらいもなく落第を課す。結果、卒業できる人の割合は6割程度となる。

 こうした形で就ける仕事が決まっていくわけであり、それは、選択という名の社会的強制ともいえるだろう。現地で「普通レベル」の社会人と話をすると、異口同音にこんな言葉が出る。「日本は天国だ」

(雇用ジャーナリスト)


     

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