就職氷河期のうち、2000年大卒者は卒業時点で15万人弱も進路未定者がいたが、そのうち8万4000人がすでに正社員として就職を果たしている。ちなみに同年の正社員就職者は約30万人で、進路未定者の2倍ほどいた。
超氷河期世代(1996~00年卒)では非正規就労者は18年時点で209万人もいたが、そのうち178万人が女性(うち既婚者は138万人)で、男性は31万人だ。この31万人の多くが非大卒となる。
つまり、氷河期世代やロスジェネといわれる人たちで、男性の場合、大卒者で現在まで正社員としての経験がない人は、言われるほど多くないことがわかるだろう。
にもかかわらず、一般化した氷河期世代のイメージが世の就活生や親御さんを焦らせ、悩ませる。そして、行政は毎年のようにこの対策費として多額の国費を投入している。これは大いなる問題だ。
いや、早合点しないでほしい。国費を削減するのではなく、もっと有効に使ってほしいという意味だ。
就労困難者の支援をする公的サービスとして、地域若者サポートステーション(サポステ)という事業がある。各地のサポステを回ると、こんな嘆きが聞こえてくる。
「氷河期世代対策にばかりお金が使われて、その他の世代がおろそかになりがちだ」
「氷河期世代が正社員採用されると、その支援をしたサポステスタッフは高く評価される。だから長らくこの世代の正社員化に注力をしてきた。そのため今では相当、就労が困難な人しか残っていない」
世には就労が困難で困っている人が大勢いる。30歳以上でも各年次で、およそ5万~10万人はいるだろう。これは氷河期世代だけが多いわけでは全くない。国費はこうした人たち全員に平等公平に使うべきだろう。
実際、氷河期世代対策ではどんな支援事業が行われているのか。各種対策は連綿と続いているのだが、とりわけ近年では、特別予算が組まれているためにその予算消化に困るケースを多々見受ける。
そうした時にえてして実施されるのが氷河期世代対策セミナーや同シンポジウムなどだ。
識者や、活用がうまくいった企業経営者を呼び、こうした催しものをしてその前後で「公的サービスの数々」をお披露目するという、判で押した内容だ。それが全国で行われて公費が消費されていく。
実は、私もこうした場に招かれることが多い。自分の登壇前に、会場にいるサポステやジョブカフェ(都道府県が主体的に設置する若者の就職支援を行う施設)のスタッフと話をするようにしている。そして、前述のようなコメントをもらう。
その後、決まって後ろめたい気持ちになりながら、セミナーに登壇することになる。
(雇用ジャーナリスト)