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【就活のリアル転載】変わる望む仕事観 新しい「安定・安心・安全」へ  栗田貴祥(2022/11/8付 日本経済新聞 夕刊)(2022/11/15)


 「若い世代」の価値観や考え方は、いつの時代も注目されてきた。不確実な社会といわれて久しい今、これから社会人になる学生にはどんな意識の変容があるのか。リクルート就職みらい研究所が2022年に卒業予定だった大学4年生を対象に行った今後のキャリア観や、望む働き方についての調査から見ていきたい。

 卒業後に望む働き方を聞いたところ、「できれば新卒で入社した企業・組織団体等で、ずっと勤めたい」が58.6%と6割近くで最も高く、「自分のキャリアを優先したりなど、転職もいとわない」が29.5%となっている。

 望む働く期間は「できる限り長く働きたい」が68.7%。「働くが早期リタイアしたい」は8.6%にとどまった。何歳まで働きたいかについては「60~69歳」が42.7%と最も高く、人生100年時代の影響もあってか、長く働くことへの意識の高さがうかがえる。「新卒入社した会社で勤め上げたい」という価値観は、世代が変わっても健在だといえるだろう。

 その一方で、働きたい組織に関しては「そうは言っても1社だけに頼るのは不安」「社会の変化に応じて自分も変化しなければ」という心理も読み取れる。

 働きたい組織の成長スタイルについての質問では「どこの会社に行ってもある程度通用するような汎用的な能力が身につく」か、「その会社に属していてこそ役に立つ、企業独自の特殊な能力が身につく」かを聞いた。すると、前者がいいと回答した学生が「どちらかといえばいい」を含め72.7%を占めた。

 従来の日本型雇用といわれる終身雇用、年功序列が崩れつつあることは、大手企業の経営者の発信などからも明らかであり、「自分で何とか生きていかなければ」という思いがこのような回答にも反映されているのかもしれない。

 この調査からは、多様な価値観が広がっていることも分かる。ワークスタイルに関する質問では「様々な仕事を、短期間で次々に経験する」か「特定領域の仕事を長期間、継続的に担当する」かだと、前者が45%、後者が55%と二分している。

 これまでの「安定・安心・安全」な人生設計は、1社に忠誠を尽くすことによって担保されると思われてきた。しかし、これからの「安定・安心・安全」は、1社に忠誠を尽くせば担保されるとは限らない。

 その組織に貢献することで自身の成長が得られ、キャリアの形成につながるか。また、プライベートとバランスが取れた柔軟な働き方ができるか、多様なキャリアプランの選択肢があるかなど、持続可能な成長につながる働き方や組織であることが求められる。個人と組織のより良い関係は「安定・安心・安全」を実現するために必要なことは何かを捉え直すことから始まるだろう。

(リクルート就職みらい研究所所長)


     

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