知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】替え玉受験 学生孤立、リアル感乏しく 上田晶美(2022/12/6付 日本経済新聞 夕刊)(2022/12/13)


 11月の報道によれば、新卒採用試験のウェブ型適性検査で、替え玉受験による逮捕者が出るに至った。

 代行してテストを受けた容疑者は28歳。立派な大学を出て一流企業で働きながら、違法行為に手を染めるとは残念極まりない。この事件で今回さらに大きな波紋を広げたのは、依頼した学生側も書類送検されたことである。依頼側も罪に問われるのは当然ではあるが、これから社会に出ていこうとする前途洋々な学生が検挙された衝撃は大きい。

 ウェブテストの替え玉受験については、ここ数年問題になってきた。新型コロナウイルス禍でオンライン化が加速度的に進んだことがその一因として挙げられよう。今回の検挙は警察のサイバーパトロールが捜査していたのだそうだ。ネットのやりとりにも警察の目が光っていることは、今後の大きな抑止力になるものと受け止められる。

 学生の就活支援をしてきた立場である私の分析としては、要因は2つあると考える。

 一つはコロナ禍による学生の孤立である。コロナ禍で大学に行く機会が減り、オンライン授業の日々の中で孤立し、就活準備が進んでいなかった。大学の就活に関するガイダンスはオンラインで開かれてはいたが、参加してもネットではしっかりと聞いていないことも多い。一昨年、ある大学4年生が「筆記試験があるなんて知らなかった」と言ってきたのは驚きだった。登校していないがために、情報が極端に少なくなっている。

 以前ならば学生同士で「ガイダンスがあるから参加しよう」と声を掛け合ったり、筆記試験の勉強をしている人を学生食堂で見かけたりということがあり、準備不足の人にも何かしらの刺激はあったところなのだが。

 二つ目はネットならではの手軽さとリアル感の乏しさだ。リアルで試験の替え玉となると、「変装するのか」「男女の違いは」といった生々しい話になると思うが、ネット上ではIDとパスワードのやりとりという容易でハードルの低いものになる。その分、罪の意識の軽さは、代行した方と依頼した方の両者に該当するといえる。ところが摘発され逮捕されると、警察に連行されるという現実のリアルな話になるのだ。

 若者はタイムパフォーマンス、略してタイパを気にする傾向が強い。それゆえに勉強の時間を惜しみ、代行を依頼する人が出てくるという見方もある。筆記試験は1カ月真剣に取り組めばそれなりの点数は取れるようになるものだ。記憶するというよりも、問題に慣れ回答のスピードを上げることが課題である。タイパを上げるにはコツコツと繰り返し演習するしかない。

 毎年、新たな就活生を支援する我々は、不正はダメだと繰り返し言い続けていくしかない。

(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

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