知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】インターンシップの効用 自己分析の良い機会に 上田晶美(2022/12/27付 日本経済新聞 夕刊)(2023/01/10)


 「インターンシップに行ってみて、ようやく就活に取り組もうと前向きになれました」と、9月から支援してきた大学3年生が報告してくれた。特に仕事としてやっていきたいと思うことがないうえ、面接などで聞かれることに答えられるかどうかも不安で、インターンシップの応募に踏み出せないと言っていた私立大学社会学部の男子学生だ。

 そこで、一緒に自己PRの内容やガクチカ(学生時代に力を入れたこと)などを考えて自信を持ってもらい、あとは応募するだけというところまできたが、それでもあと一歩がなかなか踏み出せないでいた。

 ようやく自分の興味のあるゲーム業界のインターンシップの募集があるということで、申し込んでワンデーの仕事体験に行くことができた。内容は朝から夕方までのグループワーク。参加するまではまる一日持つのか不安だったというが、実際は楽しくて時間がたつのも忘れるくらいだったそうだ。

 何をしたかというと、ゲームの企画を立てるというもの。主人公のキャラクター設定、登場人物の関係図、どんな場所のロールプレイにするか、絵柄の背景はどうするかなど、話は尽きなかったという。

 実は私は、対面やオンラインで開かれる一日職業体験に関して非常に懐疑的だった。たった一日で、しかもグループワークをして学生同士で話しても職業体験とは言えないし、業界研究や企業研究になるはずもないと思っていたからだ。

 ところが今回のように、就職活動に積極的になれない学生にとっては、モチベーションを上げる効果があることが発見できた。しかも「僕はゲームが好きだということが再認識でき、ゲーム業界を中心にエントリーしていきます」と方向性が見えて、自己分析にもなったということだ。

 大学のカリキュラム通りに、自己分析、業界研究をして、夏季のインターンシップに参加と、大人の敷いたレールの上を上手に走れる人ばかりではない。

 自信がなかったり、過去の経験で試験に対するトラウマがあったりすると、「またうまくいかないのでは」と踏み出せない学生もいる。そんな学生にとって、インターンシップでのグループワークは、就活のモチベーションを上げる実に良い体験になる。

 私は机上の自己分析はほどほどでよいと考えている。いくら過去を掘り下げていっても、学生の場合は子ども時代の話であり、仕事に関連付けていくのは難しい。

 自己分析の目的は2つある。まずは自分の希望する職種や業界を考え、次に自己PR作成のためである。今回のインターンシップは業界研究だけでなく、自己分析にもなるという良い例だった。

(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

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