就活を始めて早々にぶつかる壁の一つに「企業研究」がある。「幅広い業界や企業を調べよう」などとよく耳にはするものの、そもそも世の中にどんな企業があるのかが分からず、テレビCMなどで目にする企業以外に対象が広がらない。そんな学生は少なくない。また、「中小企業ではなく大企業や上場企業」を最初の条件として挙げる学生にもよく出会う。
では、企業のカテゴリー分けとして使われがちな中小企業、大企業、上場企業とはどんな会社なのか。理解していないと、仕事探しの選択肢を大きく狭めることにもなりかねない。改めて中身を整理していきたい。
中小企業には、例えば「製造業を営む企業の場合、従業員300人以下、または、資本金3億円以下」のように定義が明確にある。一方、一般的に中小企業より規模が大きければ大企業になる。その定義から見ていくと日本の企業数の99.7%は中小企業で、大企業はわずか0.3%。「志望先は大企業のみ」というくくりで企業選びをスタートした時点で、99.7%の企業との出合いを失ってしまうことになるのだ。
安定していそうな企業として「上場企業」を志望する学生もいる。上場企業とは、自社の株式が株式市場で取引可能な企業のこと。事業のための資本を得るために上場する企業が大半だろう。
2020年末時点の上場企業数は、約359万社(中小企業庁の20年版白書)ある日本企業全体のうち0.1%。上場企業は企業規模の大きさを示してはおらず、リクルート就職みらい研究所が調べたところでは、上場企業のうち52%は中小企業だった。「大企業か上場企業」という条件に拘泥すると、視野を狭めてしまうことが分かるだろう。最初は企業研究を幅広く行い、選択肢を増やしておくことをお勧めしたい。
大事なのは「自分がやりたいことができる企業」を見つけることだ。例えば「グローバルな仕事がしたい」と思う学生が、自社製品を海外に輸出している大企業を探しているとしよう。実際は大企業ゆえに輸出業務は商社に任せており、直接輸出には携わっていないケースもある。企業規模ではなく、海外とどう関わっているかという観点で企業を見ていくと、見えていなかった選択肢が見えてくるかもしれない。
22年大卒生への調査で当研究所が「入社予定企業等への就活開始当初の志望度」を聞いたところ、「当初は第2志望以下の志望群」が23.3%、「当初は志望していなかった」と答えた学生が20.9%いた。
企業規模や知名度ではなく、やりたい仕事があるかどうかはもちろん、自分らしさを生かして働けるかという観点からも見ていくと、最初は想定していなかった「自分に合う企業」が見つけられるのかもしれない。
(リクルート就職みらい研究所所長)