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【就活のリアル転載】コロナ世代の自己PR 「ガクチカ」より学業を  曽和利光(2023/2/7付 日本経済新聞 夕刊)(2023/02/14)


 2024年卒業の大学生は入学当初からコロナ禍の影響を受けており、「コロナ世代」とも呼ばれている。彼らが就職活動を始めて直面しているのが面接やエントリーシートで自己PRができないこと、通称「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)言えない問題」である。

 背景には、コロナ世代が非対面の自粛生活を余儀なくされたことがある。オンライン授業では友人もできにくく、クラブやサークルも入れない。アルバイトをしている割合も減っている。そこで、インパクトがあるエピソードが見つからないというのだ。

 本来、採用面接は候補者の「人となり」、つまり性格や能力、価値観を企業側が知って、仕事や文化とフィットしているかを確認する場だ。「すべらない話」を聞きたいのでもなければ成果の自慢大会でもない。必ずしもインパクトはいらない。

 社会人になれば仕事は日常なのだから、面接でも日常的な習慣から「人となり」が分かればよい。特殊な場面で発揮できた特徴よりも、日常的に継続して発揮し続けてきた特徴の方が再現性は高い。だから派手なエピソードよりも、日ごろ何をどんな風にしている人なのかを伝えられればよいのだ。

 そう考えると、学生の本分でありコロナ禍でも比較的影響が少なかった学業についての話は実は面接での自己PRに適している。どんな考えで科目を選択し、授業やグループワークでどのような行動をし、何を学びどのような成績を修めたのか。成績自体は問題ではない。学業という舞台で何をしたかを話すだけでも「人となり」を表現することは十分できるのである。

 しかも、学業は義務である。仕事も義務から始まることが多く、好きで自発的にやることだけではない。「仕事のできる人」の多くは、この必ずしも好きではない義務を自ら意味付け、動機付けできる「仕事を楽しめる人」だ。だから学業でどんなことを考え、行っているのかということから、仕事における思考や行動を推測することは理にかなっている。

 つまり、課外活動ができず自己PRに悩んでいるコロナ世代の学生は、学業のエピソードを話せばよいのだ。別に地味でも差別化できずとも問題はない。大学での学業は曲がりなりにも3年程度にわたってやり続けてきたことである。そこに自分らしさは表れているはず。安心してそれを題材に自分を表現してほしい。

 学業について話すことを学生がためらうのは採用側のせいかもしれない。大学がレジャーランドと呼ばれた昔のイメージのままの面接担当者は、学業の話を聞いても仕方ないと思っていたのだ。コロナ禍を機にその認識も改められてきている。これを奇貨として、学生が面接のために苦労してインパクトがあるエピソードを探すという非本質的な苦労がなくなればと思う。

(人材研究所代表)


     

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