「先日受けた会社のグループディスカッションがうまくいきませんでした。書記のなり手が誰もいなくて仕方なく引き受けたところ、ほとんど発言できずに終わってしまい、連絡が来ないので落ちたのだと思います」都内の私立大学3年生男子がそう言ってがっかりしていた。
採用選考におけるグループディスカッションは、昨今は型が決まっているかのようで、司会、書記、タイムキーパー、発表者の4つの役割を決めて話し合いを進めるケースが多くなってきている。
その議論の方法について詳しく聞いてみると、参加者は4人で時間は20分。テーマは「全員が満足して働くにはどうしたらよいか」というもの。20分というのはかなり短い方だ。そんな短時間で役割決めをしていたら、それだけで時間を食ってしまう。
司会のやり方については指南のノウハウを目にすることも多いので、ここではあまり注目されない書記について考えてみたい。実は書記というのは時間の長短にかかわらず、非常に難しい役回りだ。なぜかというと書記だからといってその役割にこだわり過ぎて黙々と書くことに集中していると、発言できなくなってしまうからだ。
発言しないのは致命的である。ディスカッションで採用担当者が見るポイントの第一はコミュニケーション力なのだから。いくら書記とはいえ、発言しないとそのコミュ力を判断しようがない。書記としての役割で判断してもらえればよいが、そこは会社側の評価方法に左右される。議論の成果をまとめて提出するのであれば書記は必要だろうが、それがなければ不必要な役割かもしれない。
特にこのような短時間のディスカッションでは、話し合いの過程を皆が記憶することは可能であるし、横道にそれたとしても気づきやすいので必要ないのではないか。もしも話し合いの時間が長く、成果をまとめる必要があれば誰かが書記を引き受けるしかないが、立ち回りは相当難しい。できれば引き受けたくないが、誰かがやらなくてはならないときもある。
書記になったときの対策としては2つある。まず、途中で話し合いを整理したり促したりして、司会のような立ち回りをする方法だ。ホワイトボードがあれば、立ち上がってそれを使ってまとめていけば、場の主導権を握ることができ、司会を上回る存在感となる。2つめは、最後の発表を書記が引き受ける方法だ。発言不足を挽回できるし、自らまとめているので発表しやすいはずだ。
短時間のディスカッションの場合は役割分担をせずに進めることも可能であるし、書記の役割が回ってきたときはできるだけ発言するように気を付けよう。話し下手な人は逆に引き受けないことをお勧めする。ディスカッションは経験が必要だ。
(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/