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【就活のリアル転載】入社後キャリアの自律へ 採用手法の多様化迫る  栗田貴祥(2023/3/14付 日本経済新聞 夕刊)(2023/03/28)


 リクルート就職みらい研究所では2023年大卒者の就職・採用活動の状況と、24年卒の採用見通しにおける最新の調査を『就職白書2023』として発表している。

 まず注目したいのは、23年卒の「新卒採用の採用数の計画に対する充足状況」だ。22年12月時点で「採用予定数を充足できた」企業は40.4%にとどまり、22年卒に比べ11.8ポイントも減少している。従業員規模が「5000人以上」の大手企業では22年卒に比べ19.6ポイント減少しており、厳しい採用活動だったことが読み取れる。

 その理由として「内定辞退が予定より多かった」(52.7%)、「選考応募者が予定より少なかった」(51.7%)ことが挙げられた。企業の採用意欲が高く、学生が優位な状況は24年卒も続くと予想される。

 こうした現状に合わせた企業の取り組みとして、24年卒採用に向けて見られる変化に、多様な採用手法の導入がある。「24年卒の採用方法・形態」における調査では、従業員5000人以上の大手企業で「職務限定型の採用(ジョブ型採用)」を実施または予定する率が、23年卒の実績を上回っている。

 ジョブ型というと、入社後に1回も職務変更がないとイメージされがちだが、実際はそうではない。23年卒に職務限定型の採用(ジョブ型採用)を実施した企業への調査では、「入社後一度も職務変更がない」と回答したのは22.1%にとどまる。

 つまり実質は、入社前に配属先を確約するが、一定の期間後は、本人の意向も尊重した配置転換の可能性を残しているものが大半となるメンバーシップ型雇用だということだ。この雇用の「ジョブローテーションによって本人の適性・活躍の場を見極める」というメリットが残った形ともいえるだろう。

 23年卒の「働きたい組織の特徴」調査では「様々な仕事を短期間で次々に経験する」「特定領域の仕事を長期間、継続的に担当する」のどちらを支持するかを聞いたところ、前者が43.4%、後者が56.6%だった。短期間でジョブローテーションを望む学生がいる一方で、長期間、専門領域でキャリアを積みたいと志向する学生もいる。

 25年卒以降まで目を向けると職務限定型のジョブ型採用を「導入を予定または検討」している企業は14.2%。大手企業では28.4%となっている。 

 これからは、企業主導で職種や配属地を決めるのではなく、従業員一人ひとりが自分のキャリアのオーナーシップを持ち、企業は個人がキャリアを切り開いていくための機会を提供する。そんなあり方が進んでいくのかもしれない。

 多様化する個人の価値観に適応すべく、企業は初任配属先確約採用を導入したり、一律の初任給を見直すなど、これまで画一的だった各種の人事施策を刷新していく必要もあるだろう。

(リクルート就職みらい研究所所長)


     

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