「久しぶりに採用面接を担当しました。二人一組で8人ほどを面接し、後からすり合わせをしましたが、意見が分かれることはなかったですね。合格者は4人です」。地方のテレビ局に勤めるA氏は面接を振り返ってそう話した。
彼はテレビ局の営業部の管理職だが、数年おきに採用の手伝いをしている。多くの会社で採用面接は人事部だけでなく、現場の社員、特に管理職は駆り出されて手伝うものだ。採用基準が偏らないように、現場での適性を考えるためである。
A氏が人事部から依頼され今年面接をしたのは、エントリーシートや筆記試験を既に通過している学生たちの一次面接だった。二人一組で30分ほどの面接を行い、学生の約半分を二次面接に通してほしいという依頼だったそうだ。
久しぶりだったので、適正な評価ができるのか少し不安もあったそうだが、終わってみると面接役の2人の意見がピタッと合い、学生を見る目に狂いはなかったと安心したということだった。
コロナ禍での部活動の苦労やアルバイトでの工夫など、学生たちの経験を聞くのは新鮮だったという。優秀な学生がそろう中で、何が決め手になったのか。同社で学生の本気度を測る質問は、「当社で取り組みたい仕事は何か」というものだそうだ。その答えで明らかに合否が分かれた。いわゆる「志望動機」である。
例えば、地方局であるにもかかわらず、あたかも中央のテレビ局が取り組むような仕事をしたいと言ってくる学生もいたそうだ。「政治部で外交問題に取り組みたい」と言われても、地方局の記者や番組作りの課題とは合わない。
政治の分野であれば、地方局では外交よりも、自治体の取り組みや地域に根ざした政治課題があり、それについて取材、情報発信していく。少し考えればわかりそうなものだが、準備ができていないのか、練習のつもりで来ているのか。どちらにせよ落選である。どんなに学生時代の経験が秀逸でも、実際に入社する意思は薄いと思われ、通すわけにはいかないそうだ。
学生たちを毎年見ていて、自己PRや学生時代に力を入れたこと(ガクチカ)などはうまくまとめていたとしても、志望動機までは準備できていないという人は多い。自己PRは自分のことだからどの業界、企業に行ってもほぼ同じわけだが、志望動機は1社1社違い、企業研究が必要である。
「志望動機は聞かない」という会社もあるにはあるが、自分がその会社で働くとしたら、というリアリティーを持って、受ける企業を研究してから面接に臨むべきだ。
面接本番がスタートするこの時期、説明会やホームページを活用してしっかり準備してほしい。
(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/