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【就活のリアル転載】早期化する内定 学生の自己探索に伴走を  栗田貴祥(2023/5/23付 日本経済新聞 夕刊)(2023/05/30)


 採用活動の活発化により、学生優位な状況が加速するといわれてきた2024年大卒予定者の就職市場。4月末にリクルートワークス研究所が発表した大卒求人倍率は1.71倍となり、23年卒の1.58倍から0.13ポイント上昇した。新型コロナウイルス禍前の水準まで戻り、採用意欲の回復が顕著に見て取れる結果になった。

 就職内定率も、前年の数値から変化が見える。リクルート就職みらい研究所が行った「就職プロセス調査」では、5月1日時点の大学生の就職内定率は65.1%。前年より6.7ポイント上がっている。大学院生は88.2%で前年同月比で4.8ポイント上昇。ともに高い水準となった。

 学生の4月中の就活内容を見ると「合同説明会・セミナーに参加した」「個別企業の説明会・セミナーに参加した」「エントリーシートなどの書類を提出した」との回答は前年に比べ減少している。これに対して「最終面接を受けた」は増加した。

 また、5月1日時点で2社以上内定を取得している大学生は55.2%で、23年卒の51.7%を上回る。内定を得た企業数の平均が2.16社となっていることからも、企業が前年より早いペースで選考を進めていると推察されるだろう。

 では内定率の上昇に比例して、学生は早いタイミングで進路を確定しているのだろうか。内定を得ても就活をやめていない人の割合は52.2%と前年同月より3.3ポイント高く、進路を確定させた人は5月1日時点で41.5%だった。前年同月より3.5ポイント上がっているが、内定率ほどの上昇とはなっていない。引き続き就職活動を続けようと考える学生が一定数いることが分かる。

 企業の採用意欲の高まりは学生にとっては追い風といえる。ただ早期に内定が出ることで、自分に合った企業や仕事内容を吟味しきれないまま「内定をもらったので就活を終えよう」と早々に進路を確定させるケースも少なからず出てきそうだ。

 一方で複数の企業から内定を得ても、最終的な入社先を選ぶ段階で自分の判断軸が分からなくなる事態も起こりうる。企業には採用のための選考者としての立ち位置だけでなく、学生が自分らしく社会への一歩を踏み出すためのキャリア支援者として伴走する姿勢も求められる。

 企業との対話を通じて自己探索を深められれば、学生が最終的に企業を選ぶ際の納得度は高まる。一緒になって「これからのキャリア」を考えていけば、結果として他社を選ぶことになるかもしれない。

 それでも、学生に真摯に向き合おうとする姿勢は彼らの心に強く残り、自社のファンになってくれたり、将来の転職先候補となったりと、中長期的なリターンにつながる。採用競争が激化する今こそ、対話を通じた、学生の内面の丁寧な深掘りが大事になってくるだろう。

(リクルート就職みらい研究所所長)


     

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