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【就活のリアル転載】広がるスカウト型採用 大学、学生像のアピールを 曽和利光(2023/7/11付 日本経済新聞 夕刊)(2023/07/18)


 学校は学生に平等にサービスを提供しなければならない。確かにそれは正論だ。しかし、社員や内定者の紹介で人を集めるリファラル採用や、会いたい学生にスカウトメールを送るためのデータベースであるスカウトメディアなど、企業側から学生にアプローチするスカウト型採用が流行っている現在、平等の意味を考え直さなければならないかもしれない。

 学生側から企業にアプローチするなら、能力試験の準備をし、エントリーシートを丁寧に書き、面接の練習をすれば、学生個人の努力でなんとかなることも多い。よく「学歴フィルター」と揶揄(やゆ)されるが、企業は学校名だけで個人を評価することは絶対にない。中身を見た上で、もちろん属性も参考にするというだけの話だ。個人の頑張りで学校の偏差値順位をひっくり返すことは可能であり、珍しいことでもない。

 しかし、企業側から学生にアプローチする場合は話が違う。数十万人いる学生をしらみつぶしに当たることはできないためまず属性で絞る。多くの場合は学校名で絞った上で、初めて学生個人を評価することになる。個人として評価される以前に学校名で評価されてしまうのだ。

 ただ、企業は学校名を偏差値だけで評価はしない。学校の持つブランド、要は「どんな学生がいそうか」というイメージでスカウトをかける対象とするかどうかを決める。

 例えば、女子校は偏差値は高くても、バリバリ働こうという人が少なそうと対象外とする。地方の学校に在学だと都心には来ないだろうと声をかけない。新設校はまったくイメージがないので、対象にしようがない。このような偏見に基づく選別が無意識に行われるのだ。

 これに対し学校ができることは何か。それは、採用担当者が気になり目を向けるようにするため「うちにはこんな学生がいます」というイメージを作ることだ。学内で企業が欲しがる人材を発掘して企業にアピールする場を作れば、「そんな学生がいるならアプローチしてみよう」となる。

 私が客員教授をつとめるある大学では、100社を超える採用担当者を前に優秀な学生を壇上にあげ座談会をして、学生イメージの醸成に努めた。新設校ながらなかなかの就職状況と聞いている。学内選抜を行うことや、一部の学生のみ企業にアピールすることは気が引けるかもしれない。しかし、それで学校のイメージが変わればその効果は全学生に広がる。

 そして、実は企業側もそれを望んでいる。他に手がかりがないから、相も変わらず有名校ばかりに各社のアプローチが集中し、人材の争奪戦に苦しんでおり、どこかに新しい有望株がいないか探しているのだ。一番学生を知っている学校側が「そういう人ならうちにいますよ」と教えてくれたなら、どれだけありがたいことだろうか。

(人材研究所代表)


     

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