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【就活のリアル転載】複数の内定どうする 進路、親との対話に光明  栗田貴祥(2023/8/15付 日本経済新聞 夕刊)(2023/08/22)


 2024年大卒予定者の就職内定率は、6月まで高水準が更新されていた。リクルート就職みらい研究所の調査では、大手企業の選考が開始された6月1日時点で就職内定率は79.6%となり、6月選考解禁となった17年卒以降でもっとも高かった。最新の8月1日時点では86.6%と前年とほぼ同水準だ。

 学生優位ともいえるこの状況は、学生にとって喜ばしい一方、実際に就職先を決めるときに新たな悩みが出てくる。複数の選択肢があるからこそ、どう決めればいいか分からないというものだ。

 8月1日時点の内定取得者のうち、64.0%が2社以上内定をもらっている。いずれかの企業を選択する、つまり内定を辞退する過程で、改めて「自分にとって最適な職場環境・仕事内容・働き方とは」を内省する必要が出てくるのだ。

 23年大卒者への今年3月の調査では、就職先を確定する際に決め手となったのは「自らの成長が期待できる」が50.4%ともっとも高かった。次いで「希望する地域で働ける」(35.0%)、「会社や業界の安定性がある」(34.8%)、「福利厚生(住宅手当等)や手当が充実している」(34.6%)と続く。

 また、23年大卒の就職志望者への調査では、望む働き方について「新卒入社した会社でずっと勤めたい」が62.2%ともっとも高かった一方、「自分のキャリアを優先したりなど、転職もいとわない」が27.6%、「正社員などの就業形態にこだわらず、自分に適した働き方をしたい」「いずれは独立・起業して仕事をしたい」と答えた割合が合わせて10.2%だった。

 入社後に「起業・副業・兼業」を「したい」「続けたい」と思っている学生も約3人に1人にのぼり、自ら成長することができたり、どこに行っても通用する汎用的なスキルが身についたりする組織への支持が高まっているといえる。

 働き方への多様な価値観が広がる今、「自分らしく働くとはどういうことか」、本人だけで視野を広げるのは難しい。内省を深める上で、異なる観点で助言や意見をくれる第三者の存在はますます貴重になるだろう。

 本人をよく知り、社会人としての知見もある親との関わりもまた、進路を最終決定する上で重要な要素になる。23年卒の就活を終えた学生へのアンケートで親との「関わりでよかったことがあった」との回答は「嫌だったことがあった」の2倍以上だった。「個性を尊重し、自分の活動を肯定してくれた」(41.9%)、「普段と同じ態度、見守り役、聞き役に徹してくれた」(37.3%)のほかに、親としての立場に加え「社会人としての意見をくれた」が30.1%となっている。

 進路確定という重大な決断をするときこそ、もっとも身近な大人である親との対話が真価を発揮するのかもしれない。

(リクルート就職みらい研究所所長)


     

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