「内定式を前にしてA社かB社かで悩んでいます。A社は大企業だけど、配属先も勤務地もわかりません。B社は準大手ですが配属先は約束されています」。10月1日の内定式を前にして都内の4年生女子が相談に来た。複数の内定を持ったままで9月になっているのだ。
内定式は1社しか行かないものなので、いよいよここで決めることになる。中には午前、午後と別の会社の内定式に行くという「つわもの」もいるが、それは迷惑なのでやめてほしい。会社側は内定式で採用人数を確定するという節目にもなっているのだから。
大手就職情報会社マイナビの調査によれば8月末時点の内定率は83.9%、複数内定は平均2.5社となっている。つまり誰もが1社以上、内定を断らなくてはならないわけだ。これまで出会った学生の中には「断りづらいから1社受かったら就活は止める」と言う人もいた。それでは就職先の幅を狭めてしまい、比較できずにもったいない。
では就職先を決める時の決め手は何になるのか。まずは初心に返って自分の自己分析を見てほしい。就活スタート時の軸はなんだったのか。何を大切にして働きたいと思い就活を始めたのか。給与などの待遇、会社の規模・知名度、はたまたやりたい仕事だったのだろうか。
冒頭の女子学生は「初めは単に名の知れた企業に入りたいと思ったけれど、就活を進めるうちに、自分に合っているのは大企業とは限らないと考えるようになった」という。そこで、就活の進行とともに会社を知ることで動いてきた気持ちの変遷を、丁寧にトレースしてみようとアドバイスした。
最近の傾向として、どこに配属になるかわからない会社よりも、勤務地や部署などの配属先が初めから決まっている会社に決定すると言う学生が増えてきた。彼女の例で言えば、準大手のB社である。
目先のことも大切であるし、その後のキャリアパスも10年くらいは見えている方が安心である。なぜなら、人生100年時代を生きる世代は、少なくとも一度は転職することが考えられるからだ。人事異動で会社に言われるがまま部署を異動していて果たしてスキルが身に付くのか、という不安がつきまとう。
これからは自分でキャリアを積んでいく「キャリア権」を大切にすることも重要になるだろう。配属は経理、人事、営業なのかでその先のキャリアは大きく変わるはずだ。「希望していないのに経理に配属されそのまま20年勤務した」という社会人が転職の相談に来ても経理の仕事しか勧められない。
入社後すぐの配属先に加え、自分のキャリア形成を考えることができる会社かという視点を持ってみてはどうだろうか。迷ったら1人で考えず、大学のキャリアセンターに行って親身になってくれる人に相談しよう。
(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/