毎年10月1日に行われる内定式。直前に迫り、準備に追われる企業も多いだろう。
内定式とは、企業が内々定を出した学生へ正式に内定を通知するために行う式を指す。経団連による「採用選考に関する指針」では「正式な内定日は、卒業・修了年度の10月1日以降とする」と定められており、例年10月1日に内定式を行う企業が多い。では、実際にどれくらいの企業が内定式を行うのか。
リクルート就職みらい研究所による「就職プロセス調査(2024年卒)」では、民間企業への就職が確定している学生に内定式の予定を聞いた。「開催される予定」との回答は76.5%にのぼったが、就職確定先の従業員規模によってその数値にはばらつきが出た。5000人以上の企業では「開催される予定」の割合が88.1%となり、300人未満の企業の47.2%とは大きく開きが見られた。
23年卒との違いで顕著だったのは、内定式の実施形態だ。10月1日以降に「開催される予定」と回答した学生に実施形態を聞くと、オンラインが8.9%、対面が79.6%。前年はオンラインが24.5%、対面が52.3%だったことと比べると、オンラインでの開催予定が大きく減少していることが分かる。とくに、従業員5000人以上の企業では、対面開催予定が前年の30.2%から71.2%と大幅に増えている。
この背景にはもちろん、コロナの収束があるだろう。加えて、学生優位な状況により学生が2社以上内定を保有するケースが増えたことや、内定辞退に悩まされてきた企業の危機感も反映されていると考えられる。
内定式では、多くの企業が「採用通知(労働条件や内定を取り消す場合の取り消し事由などが書かれた書面)」を学生に交付する。内定とは、採用通知を受け取った学生が入社承諾書を提出することで成り立つ。企業側の懸念として、「内定式のあとに入社承諾書を提出せずに辞退する」可能性を想定しているところもあるかもしれない。
実際、23年卒学生の10月1日時点の内定保有企業数では、2社以上と回答した学生は2.6%だった。割合として少ないものの、対面の内定式で学生と企業の相互理解を深め、入社への思いを確認する時間にしていくことは貴重なプロセスになる。
入社後の定着や活躍を見据えても、内定式と入社までのコミュニケーションの影響は大きい。学生が知りたいこと、不安に感じていることを丁寧にヒアリングし、一人ひとりに向き合う形で対話を重ねる。その姿勢により、学生は「自分はなぜこの会社で働こうと決めたのか」をはっきりと再認識することができる。
配属先の上司や先輩社員との連携、配属意図の説明なども入社への納得感を高め、入社後のパフォーマンス発揮につながっていくだろう。
(リクルート就職みらい研究所所長)