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【就活のリアル転載】初任給は高いけど 力がつく仕事かが重要 曽和利光(2023/10/3付 日本経済新聞 夕刊)(2023/10/10)


 最近、新卒の初任給を大幅に上げる企業がありニュースになっている。厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると2022年の大卒初任給の平均は22万8500円だが、新興大手を中心に30万円を超える企業などが出てきた。中には40万円以上の企業もあり、いきなりサラリーマン全体の平均年収を超えることになる。

 採用は企業間の競争なのでこの動きは徐々に広がっていく。経営者にとっては厳しい話ではあるが、基本的には消費意欲が旺盛な若者の報酬水準が上がるのはよいことだ。回り回って景気向上や少婚化・少子化解消につながっていくことだろう。

 ただ、初任給を考える上で確認しておくべきことはいくつかある。まず、月給に固定残業代が含まれている会社がよくある。固定残業代20時間分とあれば、残業が20時間を超えなければ基本的に残業代は出ない(深夜や休日の割り増しなどは企業によっては出ることもある)。

 また、初任給が高いからといって、その後の報酬も高くなるとは限らない。社内でも公開されていない企業も多いので、なかなか知ることはできないが、それぞれ「報酬カーブ」というものがある。最初は報酬が高いが伸びない会社もあれば、昇格していくたびにぐんぐん上がる会社もある。

 上場企業なら平均年収などが明らかになっているので、それを見て検討する手もあるが、平均年齢が高い会社は平均年収も高いので、平均年収が高いだけで「報酬が高い会社」ともいえないのが難しい。

 インセンティブ比率の高さも検討すべきところだ。固定的な月給と、業績によって払われるインセンティブ(賞与等)の比率のことを指す。固定は低くても賞与が高い会社もあれば、固定は高いが賞与は低い会社もある。いわゆる実力主義をうたう会社はインセンティブの比率が高い会社が多い。

 人の出入りの問題もある。「アップ・オア・アウト」といって「昇格しなければ転職」という文化の会社もある。競争に勝ち高い報酬となった人が在籍し続け、高い報酬が見込めず転職した人がいなくなれば、その会社の平均年収が高いのも当たり前だが、これを高い報酬水準の会社と呼んでよいものか。

 さて初任給とその後の報酬について見るべき点を述べてきたが、どのように感じただろう。不確定要素が多く、結局のところ、どこの会社に入れば高い報酬が得られるのかわからないと感じたのではないか。率直に言うと、その通りだ。

 初任給が高い会社はもちろん若手を厚遇する良い会社だ。しかし、その後のことなど誰にもわからない。ただ一つ言えるのは、転職が普通になった世の中、自分の市場価値が高まれば、高い報酬を払ってくれる会社は出てくる。だから初任給だけに拘泥せず、まずは力がつく仕事につくことが重要ではないか。

(人材研究所代表)


     

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