労働人口の不足は、日本社会が抱える喫緊の課題だ。リクルートワークス研究所の「Works Report 2023」が示した労働需給シミュレーションによると、40年には約1100万人の労働力が不足する「労働供給制約社会」がやってくる。1100万人というのは、現在の近畿地方の就業者数に匹敵する規模で、非常にインパクトのある数字である。
今、企業に求められるのは多様な価値観、バックグラウンドを持つ人材をいかに活用していくかだろう。その一つの取り組みである、外国人学生の採用状況について見ていきたい。
リクルート就職みらい研究所が外国人学生採用実施企業に、23年卒と22年卒を比較した採用状況を聞く調査を実施したところ、22年卒と同程度以上(「増えた」と「同程度採用した」の合計)は66.5%、「減った」は18.9%、「不明・未定」は14.6%だった。
外国人学生採用の「増えた」から「減った」を差し引いたポイントを見ると、22年卒採用以降は前年比で「増えた」が「減った」を上回っている。コロナ禍を経て、復活してきた訪日外国人観光客の増加や国内の労働力人口減少への対応で、外国人学生の採用を進める企業は増加傾向にあるといえる。
外国人学生を採用している企業は、その目的や意義をどう捉えているのか。採用目的を聞いたところ、もっとも多かったのが「組織や人材の多様性推進のため」で、55.3%だった。「特に区別していないが応募があり採用した」も半数を超えた。
従業員規模が1000~4999人と5000人以上の企業では「組織や人材の多様性推進のため」がもっとも多かったが、300人未満および300~999人の企業では「必要な人員数を確保するため」がもっとも高くなった。中小企業になるほど、人材確保が切実な課題であることがわかる。
一方で、外国人学生を採用していない企業にその理由を聞いたところ、「社内の受け入れ体制が不十分だから」がトップで36.1%。次いで「応募がなかったから」が31.0%だった。
採用を実施している企業でも、外国人学生の「日本語能力が不十分」であることを課題に挙げる企業は49.4%と多い。社内の受け入れ体制の一環として日本語教育をどう進めるかも、今後企業が向き合うべき課題になっていくのかもしれない。
同質な組織を脱し、国籍、年齢、性別が多様な人材を受け入れることは、イノベーションを起こす組織づくりには欠かせない。価値観の異なる人材が集まり、チームで力を発揮できる組織を作っていくには時間がかかるだろう。しかし、多様な人材が働きやすい職場環境、組織づくりに今から取り組むことが、来たる労働供給制約社会への備えになるはずだ。
(リクルート就職みらい研究所所長)