学生側が強い最近の「売り手市場」で、内定辞退率は平均で5割近くとなっている(リクルート就職みらい研究所「就職白書2023」)。つまり、採用担当者が頑張って自社にフィットする学生を見つけて内定を出しても、そのうちの半数しか受諾してくれないということだ。各社ともそこに苦慮している。
そこで、採用のためのマンパワーを学生の評価から、入社意欲を高める動機付けにシフトする動きがある。これまでなら多くの社員を動員して何百人、何千人の学生に面接していた企業が、エントリーシートや適性検査などの初期選考を厳しくして最初に一気に候補者を絞り込み、残った少数の人に丁寧に面接をして動機付けをする。
そもそも面接の評価精度が低いことは近年知られてきた。だから評価は適性検査等に任せ、人にしかできない動機付けにシフトするという考えだ。
初期選考が厳しくなるため、学生はその準備が今よりさらに重要になる。まず、適性検査は数学や国語の能力検査でスクリーニングされることが多いので、可能な限り早くから対策をしておくべきだ。ちまたにあふれている対策本をやればよい。
能力検査は素の状態であれば大学入試時の偏差値に相関しているといわれる。しかし私の経験では、アルバイトで塾講師をしている学生の能力検査の点数は、大学に関係なく明らかに高いので、対策は有効と感じる。
また、初期選考で多いエントリーシート対策も必須だ。例えば具体的事実を盛り込み情報量を増やし、応募する会社が求める要素(性格・能力・価値観)を持っていることを過去のエピソードで証明し、それをわかりやすい文章で書く。適性検査と違い、他者のサポートを得られやすいので、キャリアセンターや紹介会社などのオトナの力を借りてもよい。
このように特に人気企業こそ、学生の知らない間に裏では初期選考の難化が起こっていることは理解しておくべきだ。面接対策ばかりしても、面接を受けられなければどうしようもない。
初期選考がどうしても不安だという人にお勧めなのはOB・OG訪問だ。オンラインで簡単に情報が手に入る世の中で、OB・OG訪問をする学生は約16%しかいない(「就職白書2023」)。だからこそやれば目立つ。自分の大学の卒業生である必要はない。SNSなどでアプローチすることは簡単だ。
また、企業では社員や内定者、退職者といった知人の紹介で候補者を探すリファラル採用が水面下で進んでいる。その網に引っかかり、人事担当者に推薦してくれるかもしれない。現場から紹介された学生に対して、企業は基本的には会おうとする。つまり、厳格化された初期選考を飛び越えることができるかもしれない。
どの方法でもよい。後悔なきよう初期選考には注力すべきだ。
(人材研究所代表)