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【就活のリアル転載】学歴フィルターの正体 悲観は無用、要は実力次第 曽和利光(2023/12/5付 日本経済新聞 夕刊)(2023/12/12)


 毎年多くの学生が不安に思うのが、学歴によって企業が採用選別を行う、いわゆる「学歴フィルター」だ。学歴も個人の努力の結果なのだからその情報を参考にして悪いのかという考えもあるが、同じ学校でも様々な人がいるのに、ひとまとめに合否を決められてはたまらないという気持ちもわかる。実際、入試制度の多様化で、同じ学校でも学力の違いはかなり大きい。

 そもそも学歴フィルターはあるのか。どう定義するかにもよるが、結論から言うと「ある」。例えば企業が採用活動でスカウトメールを送る際、コストを考えれば就活生数十万人全員に送るわけがない。なんらかの効果的な選別を行って、集中的にアプローチするのが当然だ。

 しかし中途採用と違い、新卒学生で選別に使えるデータは少ない。学歴くらいしか使えるものがない。そこで「当社はこのあたりの学校だけにスカウトメールを送ろう」となる。これが学歴フィルターの正体である。

 これを学生側から見ると「あの学校に行っている友人にはスカウトやイベントの案内が届いているのに、自分には来ない」ということになる。連絡が来ないということは「あなたの学校は採用の対象外」と言われているような気分になるのはわかる。

 しかし、企業はそんなことは考えてはいない。全員にアプローチすることができないので、「仕方なく」これまで自社に採用実績のある「合格確率の高い」学校だけに絞ってまずはアプローチしているだけのことだ。「アプローチが来ない」=「その学校は採らない」ということでは決してない。

 実際、多くの人気企業の人事責任者と話してきたが、むしろ「人材の多様性を考えると、いろいろな学校から採用したい」というのが本音だ。だから、就職ナビで学生からアプローチが来た際に「この学校はとりあえず合格にしておこう」というのはあっても、「この学校は落とそう」とする会社などない。

 さらに言えば、最終面接などの終盤で就活生個々人の顔が見えてきて「この人はうちに合っている」と評価したのに「この学校なのか。では採用するのはやめよう」と考えることなどありえない。初期の採用活動で、それしかないので学歴情報を使うが、面接を通してたくさんの情報を得た段階では、学歴などワン・オブ・ゼムの情報でしかないのだ。

 これが学歴フィルターについてのすべてだ。もちろん、特定の学生向けのスカウトなど企業の初期の採用活動の対象にならないことは多少不利だが、それを乗り越えて実際に会ってもらい、自分を表現することができればそこから先は学歴は関係がない。自分の学校の卒業生でなくてもいいので、SNSで探してOB・OG訪問をしたり、適性検査の対策をしたりして初期選考さえ乗り越えれば、あとは自分の実力次第なのである。

(人材研究所代表)


     

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