知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】理系もコミュ力大切 研究での協力、良い題材に 上田晶美(2023/12/12 日本経済新聞 夕刊)(2023/12/19)


 ある化学メーカーの採用活動に関与しており、2025年大卒予定者の面接準備のために「求める人材要件」について各部署にヒアリングをした。全社で統一した目標を確認して設定し、その後採用選考の方策や面接の際の採点表を作成していく。

 「どんな能力のある人が部下にほしいですか」との質問に工場・事業所などの現場も、人事担当者も最も重視していたのがコミュニケーション能力だった。文系ならばそうかもしれないが、理系採用が8割の会社でも、他者との関係を築くための伝える力、質問力などのコミュ力が一番に挙がったのだ。

 理系人材の場合、研究開発の部署などもあるのだから、専門分野の成績などが重要なのではないかと思う。しかし、それよりも入社してきて環境になじむこと、会社に溶け込むこと、そして先輩・上司からのアドバイスを受け成長していくことが大事なのだそうだ。

 帝国データバンクの2022年9月の調査によれば、企業が採用で重視するのはコミュ力がトップで僅差で「意欲」が続く。3番目が「素直さ」だ。

 会社としてはまず短期的に見て、すぐに辞めずに定着していってほしい。つまり入社して困難に立ち向かっていく力が必要だが、いきなり一人で乗り越えられるわけはなく、わからないことは質問したり、できないことは相談したりしていく、そんな成長のためのコミュ力は確かに必要だ。長期的に見ても、質問力がある方が成長できるし、チームワークをとってリーダーシップを発揮し部下の育成などをするという点でも、コミュ力が基本となるだろう。

 一方で採用では「学業成績をもっと重視すべきでは」という考え方もある。10年ほど前から「GPA」という成績の平均値を出す制度が多くの大学で導入された。これは奨学金、編入学や留学などの際に活用されるということで、学生自身も気にしている数値である。

 これにより、学生自身はかなり自分の成績アップに関心を持つようになったと20年近く大学の講師をしている私も感じており、この変化を好ましいことだと思う。大学生の本分は学業であることにほかならない。

 だが、現状ではあまり就活で参考にされることは少ない気がする。私が教壇に立つ女子大学(文系中心)では、むしろ20年前の方が学校推薦という枠で成績が重視されたが、現在は推薦という枠自体が少なくなってきている。

 理系であってもコミュ力が高ければ有効ということだ。「学生生活で一番力を入れたこと」について書き込む欄は、サークルやアルバイトの活動についてとは限らない。研究したチームの協力体制や、フィールドワークでインタビューしたことなど、学業に関してコミュ力を発揮した事例はとても良い題材と思う。

(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

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