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【就活のリアル転載】スカウト型採用への対応 「選社基準」定め見極めよう  栗田貴祥(2023/12/19付 日本経済新聞 夕刊)(2023/12/26)


 採用手法の多様化により昨今増加傾向にあるのが「スカウト・逆求人型サービス」だ。企業から学生に説明会や選考などへの案内を直接送るサービスを指す。学生が就職情報サイトなどにプロフィルや自分の強み、経験などを登録すると、企業がその情報を見てスカウトメッセージを送る、という仕組みだ。

 リクルート就職みらい研究所が行った「就職活動状況調査2024年卒」では、企業にこのサービスの利用を始めた時期を聞いた。すると22年卒対象は11.1%だったのに対し、23年卒で23.2%、24年卒は24.7%と増えており、新たな手法の一つとして広がりが見て取れる。

 利用する理由は「一人でも多くの人材を確保するため」がもっとも多く64.7%。次いで「他のサービスでは出会えない学生に出会うため」が49.7%だった。人材不足により、学生の応募を待つだけではなく、企業側からアクションを起こす必要性が増しているのだろう。

 オファーを学生に送る際には、彼らが希望する「職種」「業種」「勤務地」の登録内容を判断材料にしたとの回答が上位を占めた。希望条件とマッチングする可能性が高いと思われる学生に、積極的にメッセージを送っていると考えられる。

 では、このサービスを利用した企業はそのメリット、デメリットをどう捉えているのだろう。利用して良かった点として「他のサービスでは出会えない学生に出会えた」が44.4%を占めた一方、悪かった点としては「選考に進むことが少なかった」(33.2%)、「通常の選考よりも手間が多い」(30.5%)が挙げられた。接する学生の幅が広がる利点はあるものの、学生の情報を見て個別にスカウトメッセージを送るという手間が増え、採用担当者の負担になっているのだろう。

 一方の学生側に利用して良かった点を聞くと、「知らなかった企業に出会えた」が57.1%と圧倒的に多かった。スカウトによって知らない企業を知り、選択肢が増えることはポジティブな変化だ。悪かった点としては「志望する企業からスカウトがこなかった」(34.1%)のほか、「スカウトされた内容では、自分の経験やスキルを評価されたとは感じなかった」が24.8%だった。

 なぜ自分がオファーされたのかが不透明では学生の行動変化にはつながらない。企業側は自社で活躍できる人材の要件をわかりやすく説明した上で、学生のどこを評価し、入社後にどんな活躍につながるかを丁寧に伝える必要がある。

 学生もまた、自分なりの「選社基準」を定め、スカウトメッセージをもらった企業とどの程度合致するかを見極めていく必要がある。新しい企業に触れる機会を有効活用しながら自己探索を深め、納得のいく1社を選べるよう情報収集をしていってほしい。

(リクルート就職みらい研究所所長)


     

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