2024年大卒予定者の昨年12月1日時点の内定率は95.1%と、前年と同水準となった。現行の就活スケジュールとなった17年以降、12月1日時点の内定率は94~95%で推移しており、大きな変化はない。ただ、2月1日時点から月次で定期的に発表している内定率を経年で比較していくと、大きく変化していることが見て取れる。
17年卒のデータを見ると2月1日時点の内定率は2.3%、3月1日時点で9.7%、6月1日時点で51.3%だった。一方、24年卒は2月1日時点で19.9%。3月1日には30.3%と、すでに3割の学生が内定をもらっている状況だ。6月1日時点では79.6%と17年卒以降で過去最高の内定率となり、「就活の早期化」がはっきりと数字に表れていることが分かる。
同じ就活スケジュールで、ここまで早期化が進んでいる背景には何があるのか。前提にあるのは、ますます深刻化する人手不足社会への危機感だ。10年代前半まで大卒求人倍率は景況感との相関が強かった。しかしいまや、人材獲得競争の激化を見越して景況感との相関はそれほど見られなくなっている。
また昨今、就職活動や採用活動において重要な位置づけとなっているインターンシップの隆盛の影響も大きい。インターンシップ等キャリア形成支援プログラムの実施状況を経年で見ると、14年卒向けの実施率は39.0%だったのに対し、新型コロナウイルス禍前の20年卒向けでは89.4%と、9割近い企業が行うほどに浸透している。
23年卒では70.2%と、コロナ禍の影響で減少に転じているものの、実施が多数を占めている状況は今後も続いていくだろう。23年卒において実施目的を聞くと「仕事を通じて、学生に自社を含め、業界・仕事の理解を促進させる」が87.2%と圧倒的に多く、次いで「採用を意識し、学生のスキルを見極める」が39.5%になっている。採用活動につなげたいという企業側の意欲の高さがうかがえる。
学生側の参加状況は14年卒では23.9%だったが23年卒では75%が参加。就活準備において企業を知る重要なプロセスの一つになってきたことが分かる。
学生が早い時期から将来のキャリアについて考えを深めることは、学生時代にどう学業や課外活動に取り組むのかを見つめ直す良いきっかけになり、その結果「学ぶ」と「働く」の好循環が生まれると考える。
そのために企業側がインターンシップ等で、情報や就業機会を提供することは良いことだと思う。しかし、そこに採用選考の色合いを色濃く出すことで、学生が就職活動に振り回され、本分である学業や課外活動などに支障をきたすようなことがあってはならない。「学ぶ」と「働く」の好循環が生まれる枠組みを、採用の早期化が加速する今こそ、社会全体で考えていくべきであろう。
(リクルート就職みらい研究所所長)