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【就活のリアル転載】採用面接で何を聞く バイトではなく学業を 曽和利光(2024/1/236付 日本経済新聞 夕刊)(2024/01/30)


 私が就職活動をしていた30年以上前はよく「学校の勉強など社会に出たら関係ない」といわれていた。そして定義が謎の「地頭(じあたま)」のよい人を採りたいと多くの企業が考えていた。

 確かに昔は「大学はレジャーランド」ともいわれ、学生は授業も出ず、勉強していなかった。一生懸命やっていないことについて聞いても、その人のことはわからない。だから、企業がアルバイトやサークルなどの課外活動のことばかり面接で聞いていたのは、当時はある意味正しかったのかもしれない。

 しかし、時代は変わった。全国大学生活協同組合連合会の「学生生活実態調査」(2022年調査)では、大学生活の重点は「勉強」が30.3%とダントツの1位でオンライン授業が増えた今も週4日は登校している。また、キャンパス滞在時間は1日平均6.5時間にもなる。マージャンのメンツ探しや、定期試験対策で授業ノートを借りるだけに大学に行っていた自分からすると隔世の感がある。

 人のことを知りたいなら、一生懸命やってきたことを聞くべきである。それならば今は面接で学業について聞くことが自然だ。どういう理由で何を勉強して、そこから何を学び、どんな考えや行動に至ったのかを聞けば、そこに彼らの人となりが表れているはずだ。なのに、いまだに企業は面接で課外活動のことばかり聞いている。生活のために仕方なくやるアルバイトの話を深掘りしても、その人のことをそれほどわかりはしない。

 背景には、採用担当者が今どきの学生の変化に無知であることもあるが、学生側にも原因はある。よく聞かれる「ガクチカ」は、自発的に好きで行ったことを話すものと思い込んでいる。学業は義務であり、必ずしも好きでやったことではない。また、学業はみんなやっているので差別化できないと考えている。面接は変わった人を見つける場ではなく、本当は差別化などいらないのだが。

 私は企業と学生、双方がもっと面接で学業をテーマに話せばよいと思う。実際に学生が一番力を入れていることだからだ。学業について聞くことのメリットはそれだけではない。業界や仕事によって異なるが、世の中の仕事がどんどん知性化している現代において、どんな企業でも必要なのは様々な思考力だ。学業の話をすればその思考力がいろいろわかる。

 加えて、学業が義務という点が実は重要だ。社会で活躍している人は「仕事を楽しめる人」が多い。好きなことを頑張るのは当たり前だが、できる人は義務の仕事も、どうせやるなら楽しもう、学ぼう、頑張ろうとするから成果が出る。学生の義務である学業への取り組み姿勢を聞くことはこういう点でも有益だ。最近は大学側も授業に工夫をしており、学業の話から学生の資質を見抜きやすくなっている。もっと学業の話をしよう。

(人材研究所代表)


     

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