2025年大卒予定者の3月1日時点の就職内定率が出た。就職活動の早期化が指摘されて久しいが、彼らを取り巻く環境はどう変化しているのだろう。
リクルート就職みらい研究所が実施している「就職プロセス調査」によると、3月1日時点の就職内定率は40.3%で前年から10.0ポイント増えている。
地域別で見ると「関東」が42.1%と前年比で6.3ポイント、「中部」が39.3%と7.1ポイント、「近畿」は44.2%で10.7ポイント上がっている。
昨年は低かった「その他地域」は18.0ポイント上がって33.4%となり、地域差が小さくなった。エリアや企業規模にかかわらず、全体的に内定が出るのが早期化している傾向が読み取れる。
過去からの推移で見ると、現行の就活スケジュール(3月に採用広報、6月に選考が解禁)になった2017年卒では、3月1日時点の就職内定率は4.6%だった。25年卒は40.3%と約9倍になっていることからも、就活のあり方が大きく変化していることは明白だ。
こうした変化には何が影響しているのだろう。就活の1~2月中の活動実施率を見てみると「個別企業の説明会・セミナーに参加した」「エントリーシートなどの書類を提出した」との回答は24年卒と比較してほぼ横ばいだ。「合同説明会・セミナーに参加した」は減少傾向にある。
一方、「面接選考(最終面接を含む)を受けた」学生は1月中が前年よりも4.9ポイント、2月中が2.5ポイント増えた。最終面接は1月中に受けた人が同4.5ポイント増の21.0%、2月中は1.8ポイント増の30.5%となっており、面接が前倒しで活発になっていることがわかる。
3月1日時点の内定取得者のうち、内定取得企業数が2社以上と答えた学生は48.2%にのぼり、24年卒の35.8%から12.4ポイント増えた。早くから就活を始めている学生に内定が集中しているとも考えられ、企業側からすれば辞退される可能性が高まっているともいえる。
学生に追い風が吹いているともいえるこの状況は、選択肢が多いという良い面もある。一方で、内定をゴールにとらえてしまい、企業を選ぶ際の自分なりの軸が定まらないまま「内定が取れたから」と就活を終える学生を一定数生み出すことにもなりかねない。
長い人生を見据えた時に、これからのキャリアや仕事に何を求め、何を大事にしていきたいと考えるのか。自分なりの選択基準を持つことは、最終的に納得感を持って進路を選ぶことにつながる。
企業側は、焦って早期に内定を出しても、最終的に選ばれるとは限らない。その学生にとって大事な軸を一緒に見つけていくような、相互理解を深めるコミュニケーションを続けていくことが重要になるだろう。
(リクルート就職みらい研究所所長)