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【就活のリアル転載】採用活動時期の規制 学生にも負担、撤廃検討を 曽和利光(2024/3/26付 日本経済新聞 夕刊)(2024/04/02)


 新卒採用は売り手市場化が進み、企業の採用活動は早期化している。大学3年生の夏のインターンシップが採用活動の実質的なスタートで、早い企業はそのまま本選考につなげ年内に内定を出す。就職情報会社のディスコ(東京・文京)の調査では25年卒の3月1日時点の内定率は43.2%にもなった。

 ところが、政府や大学は今でも企業に「3月に採用広報、6月に面接など、10月に内定」の解禁を要請しているため、リクナビやマイナビなどのメガ就職サイトはそれを順守し3月1日にグランドオープンしている。数百人の採用を行う大手企業はメガ就職サイトの力を借りなければ採用目標の達成は困難なので、学生から一番人気の日系大手企業はそれ以降しか採用活動を本格化できない。

 これはどんな影響を与えるのか。学生は早期に採用を始める外資系や新興大手企業と、日系大手の採用時期が大幅にずれて困っている。早期に内定を出した企業があっても、日系大手の決着がつくまで長時間かかり、大企業に内定が出れば辞退されてしまう。その結果、2人に1人しか入社を受諾してもらえない状態となっている。

 もし採用活動時期の規制がなければ、日系大手も外資系などに合わせて3年生の夏のインターンシップが主戦場になるだろう。そうなれば、学生は外資のコンサルと総合商社を一緒に受けて、どちらに行こうかと同時期に悩むことができる。また、早期に人気企業の採用の山が来るので、中小企業やベンチャーは効率的に採用活動をするタイミングを見極めやすくなる。

 もともと採用活動時期の規制は「学業を阻害しない採用活動」のためのものであった。それは私も大賛成だ。しかし、今の学生はきちんと授業に出席するので(しなければ単位が取れない)、企業も長期休暇や土日や夜に採用イベントを行うようになった。売り手市場にもかかわらず学生に負荷をかける採用手法を取る企業は、応募が激減している。

 つまり、学業を阻害する採用手法は既に実質的にはできなくなっているのだ。それならば、企業の採用時期の規制は一体誰のためにやっているか。規制がなくなれば、企業は野放しになり採用活動の超早期化が進むなどとも言われるが、おそらくそれは杞憂(きゆう)だ。

 小中学生の時につきあった人と結婚する人が少ないように、何事にも適した時期というものがある。大学の低学年を対象に本格的な採用活動をして成功した例を私は寡聞にして知らない。また、学業を阻害しない手法であれば、万が一企業の採用活動が超早期化したとしてもそれは何が問題なのか。

 もう既に早期化は最高潮に達していると見ている。これ以上早くはならないだろう。そろそろ採用活動時期の規制はやめてはどうだろう。その方がきっと学生も企業も喜ぶのではないだろうか。

(人材研究所代表)


     

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