知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】面接で語るエピソード 光の当て方に工夫を 上田晶美(2024/4/23日本経済新聞 夕刊)(2024/04/30)


 来週、最終面接なので面接の練習をお願いできませんか?」 都内私立大学の理系男子4年生から依頼を受けた。理系ではあるが大学の推薦等ではなく、一般公募での最終面接をいくつか控えているという。おそらくゴールデンウイーク前に内々定が出るもようだ。

 就職情報サイト「キャリタス就活」の調査では、4月1日時点の大学生(理系は大学院生含む)の就職内定率は62.8%(前年同月比プラス9.9ポイント)。3月中に、すなわち3年生のうちに約6割の学生が就職先に内定していることになる。

 毎年「就活が早まっている」と書いている気はするが、今年は特に、2025年卒からインターンシップの制度が変更になったことを受けて早期選考が公認され、一層内定出しが早まっているもようだ。

 この日程が定着すると大学生活の過ごし方も変わってきそうだ。大学3年生が就活本番で、4年生でまた大学生活に戻ることになる。既にサークル活動などは引退しており、大学の履修の方もゼミや卒論だけとなっている人が多く、余った時間を有効活用してほしいものだ。

 さて、面接依頼をしてきた彼のエントリーシートを見たところ、地域創生のサークル活動でリーダーシップをとった経験が書かれていた。2年生への引き継ぎの際、バーベキュー大会を開いてコミュニケーションを図り、スムーズに交代できたというエピソードを話してくれた。

 地域創生の活動自体はどんなものだったかを詳しく聞くと、千葉県のある市で地元の活性化に取り組み、地域の人たちのお困りごとについて若者目線で提案・実行をしてきたという。一つは漁港であがる魚の中でも市場に出せない規格外の未利用魚の活用や販路の開拓に取り組み、地元の大人たちと話し合いを重ねてきている。

 仮に「後輩とのチームワークづくり」「大人とのコミュニケーション」とすると、社会人から見れば後者の方が断然興味深い。社会に出ると異年齢の人とコミュニケーションをとり、チームを組んでいく力が求められるから、こちらのエピソードの方が役員の心に刺さるはずだ。

 彼にそう伝えると「ここまでこのエピソードで受かってきたのに、変えるということですか」と困った様子だ。だが、ここまでは筆記試験や成績などの総合評価や、他の質問の答えが良くて残れた可能性もある。さらに役員面接で有用な人物と評価されるためには、もう一頑張りが必要だ。

 同じサークル活動でも、スポットを当てるところ、光の当て方、切り取り方で印象は格段に変わる。どんなエピソードが採用側、社会人の関心を引くかを再考してみよう。面接は学生時代の経験をすべて話すというものではない。社会に出てから、またはその会社で役に立ちそうな経験について話す方が効果的である。

(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

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